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「おなかぺこぺこオノマトペ」書評 「味だけでない」おいしさが伝わる

評者: 石川健治 / 朝⽇新聞掲載:2019年11月23日
おなかぺこぺこオノマトペ 擬音語・擬態語をバイリンガルで理解しよう! 著者:きの とりこ 出版社:千倉書房 ジャンル:言語・語学・辞典

ISBN: 9784805111833
発売⽇: 2019/10/25
サイズ: 19cm/160p

おなかぺこぺこオノマトペ I'm PEKO-PEKO Hungry! [著]きのとりこ

 作者は、ベルギーで仏語絵本最優秀賞をとった『やさしい死神((しにがみ)』(千倉書房)で知られる絵本作家。外国語の使い手にして「場面」描写の専門家。この奇跡的な組み合わせが、類書にない特色をもつオノマトペ(擬音語擬態語)の本を書かせた。
 「味だけではない、おいしさ」の項が本書の白眉だ。オノマトペは、「クロワッサンと天ぷらとりんご」を質感の共通性でつなぐ一方で、単純にクリスピーな食感を「形や硬さ、含む水分の量」に即して、かりかりやぱりぱり等に分節化して形容し、動詞単独での表現力の弱さを補う。この特徴が、視覚(絵)と聴覚(脚韻)に訴える日英文で見事に表現されるとともに、発音記号では伝わらぬ発音のコツまでがユーモラスに解説される。
 終章「日本の四季」における画調の劇的な変化は印象的であり、隅々まで神経の行き届いた編集作業も称賛に値する。本稿筆者には必要不可欠な「ぎりぎり」の語が選に漏れたのは、本書のもつ世界観の故であろう。