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「アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」 常識から離れ、感性で限界を突破

 直感や感性など「見えないこと」をアートに学び、ビジネスでの限界を突破しようとする動きが注目されている。

 現代アートの専門家で、直島の地中美術館、金沢21世紀美術館の館長として、来場者数を大幅に伸ばした著者が「アート思考」を解き明かす。

 浮かび上がるのは、「問いを発する」「常識を疑う」「身体感覚」「思考の飛躍」といったキーワードだ。

 今の社会は何が課題なのか本質的な「問い」を立てる。

 常識から離れ、五感を駆使して外界と直接向き合い、集中すると、環境が自らの知覚と行動に影響を与えて、ある瞬間、思考が飛躍し、新しいアイデアが「出現」する。

 「作品を通してアーティストの思考を追体験」。便器にサインしただけの作品名《泉》など、著名アーティストとその作品を多数登場させた構成が効果的だ。

 類書はビジネス界の識者がアート思考を外から分析し、ノウハウを抽出するのに対し、本書は内から本質を照らし出そうとする。体系的なまとまり感にはやや欠けるが、著者が語るメッセージ性の強い現代アートの世界に引き込まれ、アート思考の言葉では語りきれない感覚も感じ取っている自分に気づく。=朝日新聞2019年12月21日掲載