神代(くましろ)辰巳は映画通が偏愛する監督だ。ホームグラウンドの日活ロマンポルノで「赫(あか)い髪の女」や「四畳半襖(ふすま)の裏張り」といった傑作を連発し、一般映画でも「青春の蹉跌(さてつ)」などの名作を残して1995年に67歳で逝った。マニアックな映画本でも知られる国書刊行会がこの巨匠のすべてを語り尽くした『映画監督 神代辰巳』を出版した。重さ1・6キロ、700ページを超える大部。定価も税込み1万3200円と高額だが、編集の樽本周馬さんによると「社内で『2万円にしないと採算が取れない』と言われた。普通の本が6冊分入っているので、決して高くはないはず」。過去の批評や未映画化脚本などのほか、神代映画の女神・宮下順子を始め、荒井晴彦や長谷川和彦らの語り下ろしインタビューも充実。樽本さんは「神代監督のことになると、皆さん、話が止まらない。気付いたらこんな分量になっていて青ざめました」。(編集委員・石飛徳樹)=朝日新聞2019年12月21日掲載
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