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百戦錬磨のプロ経営者がやさしく語るリーダーシップ 新日本プロレス社長のハロルド・ジョージ・メイさんが講演

文:田河国彦、写真:斉藤順子

リーダーに欠かせない要素はイニシアティブと熱意

 私はサラリーマン生活の半分を外資系企業、半分を日本企業で働いてきました。それぞれに良い点、悪い点、また考え方の違いがありますが、自分の経験に基づいたリーダーシップのあり方についてお話しさせていただきます。

 まずはリーダーに欠かせない要素についてですが、大きく分けて二つあると思います。一つ目はイニシアティブをとれるかどうか。自ら行動を起こして、新しいチャレンジに導いていくのがイニシアティブ。リスクがあり、失敗するかもしれない。だからこそ成功率が高い提案をしないと人はついてきません。イニシアティブをとるために大切な点は聞く耳を持つことです。まずは、いろんな人の意見を聞きましょう。自分の中で結論を決めている場合でも他人の意見を聞いてから結論を伝えるようにする。

 日本はみんなで一緒にやるという参加型経営が多く、この部分に時間を費やすことは非常に大事です。また数字を使うことも重要です。会社にはいろいろな考えの人がいるので、例えば、この商品は美味しいですと言っても、その定義は人によって変わります。でも美味しさを客観的に数字で表せたら、誰に話しても分かるようになります。戦略をできるだけ数字を使って具体的に説明することが必要なのです。

 リーダーに欠かせない要素の二つ目は熱意がみなぎっているかどうか。いくら戦略が正しくても、人に伝わらないと意味がありません。そして言葉には必ず人間というフィルターが入ってきます。リーダーが100の熱意で喋っても、聞いている人は70ぐらいで受け取ります。それをさらに下の部下に説明すると40ぐらいになります。でもリーダーが200ぐらいの熱意で伝えると、下がっても100ぐらいで収まるかもしれません。ある意味、ちょっとオーバ―に言った方がいいのです。

 ちなみに日本の経営幹部の方々は、自分からイニシアティブをとって「こうしましょう!」と提案することが少ない反面、出した意見には反対する人が多く見受けられます。でも「じゃあ、どうしたらいいの?」っていう対案は持ってきません。それではただのクレーマーです。そんな時、私は「反対するなら今の倍考えて、どうすればいいかの案を出してください」と言うようにしています。

リーダーシップに近道はなし 経験や自分自身で切り拓いていく

 また社長になった時と、社長でなかった時の仕事・役割で根本的に違うと思ったこともお話します。ひとつはビジネスを見ている時間軸。社長でない時は、明日の売り上げ、来年の計画までしか考えていませんでした。でも社長になると5年も10年も先のことを考えなくてはいけません。例えば「ベトナムに工場を建てるのに、立地場所は? 現地の取引銀行は?」などの未来を見据えて計画を立てる、これが社長の役割です。そして現場に自分の仕事を任すようになる。

 社長になると責任が多くなり、今まで自分がやってきたことを他の人に託すしかなくなってきます。経験豊富な自分がやった方が早いと自身での対応を続けていると次の世代が育っていきません。今まで自分がつくり上げたことを、他の人に任そうという勇気を持つことが社長には必要です。また妨げを取り除くことも大事な役割のひとつです。仕事で困難にぶつかった時に、取引先などに出向いて直接話をしてあげる。会社のトップからの説得は非常に有効な場合があります。

 最後にボスとリーダーの違いについてお話します。言われたことを伝えているだけなのがボス。それに対し、一緒に参加して、一緒になってやるんだという気持ちでみんなを引っ張っていくのがリーダーです。リーダーシップに近道はありません。経験や自分自身で道を切り拓いていき、人に認められることが大切です。これが私から皆さまに贈る百戦錬磨のリーダーシップ論です。