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今こそ開高健! 生誕90年、出版やイベント相次ぐ

イベント「ビギナーズKAIKO!」では開高健が使っていたルアーも展示された

 ベトナム戦争を現地で取材し、紀行、魚釣りなどで世界をかけめぐった行動派の作家、開高健が没して昨年で30年、今年は生誕90年にあたる。
 昨年は、ゆかりのあった編集者や愛読者を中心に、著作を見直す動きが進んだ。作家大岡玲さんが編んだ『開高健短篇選』(岩波文庫)と、パリについてのエッセーと画家ユトリロの評論をまとめた『開高健のパリ』(集英社)が出版された。

 12月には東京・渋谷で「ビギナーズKAIKO!」と銘打ったイベントが開かれた。トークショーの登壇者の言葉からは、読まれ続ける理由の一つである間口の広さを感じさせた。

 トリスウイスキーのコピー「『人間』らしくやりたいナ」はあまりに有名だ。「悠々として急げ」「春の肉体に秋の知慧(ちえ)の宿る理屈があるまい」――名言の数々が、時を経ても人々を引きつける。コピーライターの一倉宏さんは「高度成長期で生活が豊かにはなっていくけれど、それが人間らしさかい、と当時から問題提起をしているのがありありとわかる」と語った。

 ノンフィクション作家で探検家の角幡唯介さんが『輝ける闇』を読んだのは開高が執筆したのと同じ、30代のころ。「いかに自分の生き方や性、実存を打ち立てるかをひたすら書いた話だと思った。僕も生き方を見つけるのに必死だったから共感した」と話した。

 開高健記念館と茅ケ崎ゆかりの人物館(ともに神奈川県茅ケ崎市)では共同企画展「漂えども沈まず 開高健の生きかた」が開かれている。3月29日まで。(興野優平)=朝日新聞2020年1月15日掲載