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「お金本」書評 お金をめぐる作家たちの悲喜こもごも

評者: 間宮陽介 / 朝⽇新聞掲載:2020年01月18日
お金本 著者:左右社編集部 出版社:左右社 ジャンル:小説

ISBN: 9784865282511
発売⽇: 2019/10/01
サイズ: 19cm/334p

貯金は底をついても才能は枯渇しない! 小泉八雲、二葉亭四迷から村上春樹、北野武まで、文豪を中心とする作家たちのお金にまつわるエッセイ、日記、手紙などを集めたアンソロジー。…

お金本 [編]左右社編集部

 お金をめぐる作家や詩人らのアンソロジー。ペン1本で身を立てる苦労は今も昔も変わらないだろう。文豪といわれる人たちでさえ、お金から自由になることはできなかった。
 本書には全部で100篇の文章が収録されている。たいていは数ページ程度の短いものである。生活の窮状を綴る日記、借金あるいは返済猶予を乞う手紙、その他、金にまつわる話がつらなる。すぐに食傷するかと思いきや、一気に読ませる面白さがある。
 皆、なんと楽天的なのだろう。頼んだ金が届くと、「来た来た、来ました来ました、ありがたう、ありがたう」と小躍りし、「酒はうまい、うまいですなあ、――焼酎はいけませんぞ」と軽口をたたく種田山頭火。
 本書の魅力は、それぞれの作家がもつ文体にある。契約という論理国語で金の貸し借りをすれば、年来の友情は断ち切られる。論理国語を文学国語に優越させようとする人は、金の苦労を知らない人なのだろう。