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「世界哲学史1」書評 新書で読む東西の哲学の地平

評者: 出口治明 / 朝⽇新聞掲載:2020年02月08日
世界哲学史 1 古代 1 知恵から愛知へ (ちくま新書) 著者:伊藤邦武 出版社:筑摩書房 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784480072917
発売⽇: 2020/01/06
サイズ: 18cm/297,17p

世界哲学史1 古代Ⅰ 知恵から愛知へ [編]伊藤邦武、山内志朗、中島隆博、納富真留

 最近、新書が熱い。『世界哲学史』全8巻、一昔前なら岩波講座の出番ではなかったか。ここでいう「世界」とは西洋から拡大した地理的領域にとどまらない。哲学は私たちが生きる場を世界と呼び、地球から宇宙へ、現在から過去や未来へと対象を広げる。哲学は普遍性と合理性を旨とするがこの二つの概念はギリシアが生み出した。世界哲学への挑戦は改めて哲学とは何かを問うことになる。本書は文明の始まりからヘレニズム期の紀元前2世紀まで、東西の先哲が世界や魂をどのように考えたかを概観する。紀元前6~5世紀ごろ、彼らの関心は世界から自己・魂へと向かう。それはなぜか。一般に流布したソクラテスの「無知の知」は誤りで「不知の自覚」と訂正される。終章はアレクサンドロス東征によるギリシアとインドの出会い。通読してワクワクした。全8巻が出そろった時、哲学の地平はどのような展望を示すのだろうか。