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「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」 根本にある経営者の責任を追及

 大規模システム障害を二度起こしたみずほフィナンシャルグループが進めた基幹系システム全面刷新プロジェクト。第一部は、遅延続きで「IT業界のサグラダファミリア」と揶揄(やゆ)されつつ、昨年完成させるまでの軌跡を追う。

 第二部は、全面刷新の契機となった東日本大震災発生時の障害を拡大させた「三十の不手際」。第三部は、旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行が2000年に経営統合し、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行が発足した直後の障害の顛末(てんまつ)を描く。

 時系列に沿った記述にすると、失敗や困難を経て帰結した成功物語になってしまう。あえて時間をさかのぼったのは、システム障害の根本原因である経営陣の責任の追及を主眼としたためだ。

 情報システムは銀行の生命線であるのに、IT軽視と危機管理意識の欠如。経営統合時に明確な戦略を描くことなく、旧三行間で主導権争いを演じた。

 浮かぶのは、太平洋戦争の敗因や原発事故の背景だ。技術軽視、浅薄な現状認識、組織間の縄張り争い。歴史を繰り返さないために問われるのは、新システム稼働後の経営陣の問題意識だ。そんな著者らの苦言が行間に響く。=朝日新聞2020年3月7日掲載