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BLラバーの書店員が語る「年度末総決算⁉︎ 令和元年度マイベストBL」

作者の熱量に圧倒! 大人の三角関係を描いた特別な作品(井上將利)

 この1年間の“マイベストBL”なんておこがましい限りですが、やはり今回はダヨオさんの「ロンリープレイグラウンド」(祥伝社)ですね!

 昨年11月に開催したダヨオさんとのトークイベント(イベントの模様はコチラ)で作品作りに対する凄まじい熱量に圧倒されて以来、僕にとって特別な存在である本作を皆さんにもご紹介しなければ‼と、鼻息荒めに書き出しております!(笑)

 本作は中華料理屋でバイトする若者・岸野慧介と地味で大人しそうな会社員・才川雪文、そして雪文の不倫相手・雨津木正継(妻子持ち)の3人による三角関係が繰り広げられていく作品。

 日頃から気になっていた会社員(雪文)が雨のガード下で佇んでいたので声をかけた慧介は7年に及ぶ不倫の末、捨てられたと話す傷心中の雪文と成り行きで一夜を共に……。
地味な外見とは裏腹に“すご~くHなお兄さん”だった雪文のギャップに早速メロメロになる慧介でしたが、同時に不倫相手の存在がチラつくのでした。
 そして翌朝、その不倫相手・雨津木と鉢合わせバチバチ状態に。「おれが仕込んだ」と雪文をオモチャ扱いし支配しようとする雨津木が許せない慧介は、雪文を助けようと自宅に匿うのですが、三角関係はこのままでは終わらず……⁉︎

 作中では雪文を守りたいという慧介の想いがとにかく全面に出ていて「巻き込まれ上等」なんてカッコよく言うんですよ。もう思わず「コイツ眩しすぎる~‼」って心の中で叫んでたら、直後に雪文の「眩しい」ってセリフがあって、「あ、僕の視点こっちだったのか(笑)」と気付かされました。でも二人が一緒にキッチンでキャッキャウフフと料理している時は、じゃれ合う小動物を眺めるがごとく客観的に尊さを享受しましたけどね!

「ロンリープレイグラウンド(上)」より ©ダヨオ/祥伝社 on BLUE comics

 そんな想い溢れる慧介の愛に浸りながらも、心の何処かにある雨津木の存在も自覚する雪文が戸惑いながら少しずつ変わっていく様が本作の見どころ。ダヨオさんの前作「YOUNG BAD EDUCATION」とはまた違った魅力を持つキャラクターたちが楽しませてくれる作品です。そして僕が個人的に大好きな、“雪文がおもむろに慧介の煙草をくわえて宙を見つめる”シーンも併せて、ぜひ楽しんで頂ければと思います!

 ……でも雨津木のことも何だか嫌いになれないんだよなぁ~~‼

“女装攻め”という新しい扉が開かれた……!(キヅイタラ・フダンシー)

 令和になってもうすぐ1年経ってしまうのですね! 年々時間が過ぎるのが早くなって年を実感しつつ(笑)、この1年でも本当にたくさんの良作に出会ったな~と思っています。令和元年度に発売された作品のマイベスト!ということでご紹介する作品はコチラ!

 阿部あかねさん「華と楽」(新書館)

 そもそもヤンキー(受け)が好物というところもありますが、新しい扉を開かせてくれた!というポイントでマイベストに挙げさせていただきました。その扉は“女装攻め”(爆)。女装というジャンル自体は比較的メジャーかと思いますし、作品もいくつか読んだことはあったのですが、本作の攻め・受けのキャラクター、そしてストーリーがすごくストライクゾーンにハマりました!

 本作は「花にくちづけ」シリーズの5作品目として位置づけられます。女装メイクアップアーティストの椿と、ヤクザの組長のドラ息子・将大のカップルのお話です。シリーズのスピンオフとして描かれている二人の物語。前作「月と太陽」を読んでいただくとさらに作品を楽しんでいただけると思います。僕はこの「華と楽」をまず手に取り、二人の出会いを描いた前作を後から読んだのですが、それでも十分楽しめました♪

 お話の方に戻りまして、紆余曲折あってお付き合いすることになった、遠距離恋愛中の椿と将大カップル。メイクアップアーティストとしての仕事も忙しい椿、なかなか会うこともできない二人の久々デート。ガラの悪そうなヤンキーの将大が見せる甘えたがりな仕草にキュンとしたところから僕の心は掴まれていたのかもしれません。ぶっきらぼうながらも素直な将大の一挙一動が正直可愛すぎました(笑)。そして椿も美人だけど大柄な男で怖いときはすごく怖いし、ドS攻めキャラなのですが、仕事に向き合う真摯な姿勢や、将大と一緒にいるときの幸せそうな顔と、表情がコロコロ変わってとても魅力的!

「華と楽」より ©阿部あかね/新書館

 そんなラブラブな二人ですが、竹田という謎の男の登場で展開は大きく動きだします。才能も魅力もある椿と、椿に拾われただけだったチンピラの将大。竹田の存在が二人の未来をこんなにも変えてくれるとは……最終第5話が本当に良くて、将大の男らしさに心の中で拍手喝采でした。ただの恋愛だけで終わらず、愛する人のために人はここまで変わる、ということを示した将大の成長物語でもあったんだな~と、前作から読み通して感じたのでした。

 感動のストーリーと二人のほっこりイチャラブ、そして女装攻めの魅惑……令和マイベスト作品として大推薦いたします!

新刊を心の底から待ち望み続けた10年(貴腐人)

 今月のお題は「年度末総決算⁉︎ 令和元年度マイベストBL」!

 マイベストなんていっぱいありすぎて困っちゃう♡と思っていたところに滑り込みで発売されました本間アキラさんの「兎オトコ虎オトコ」(白泉社、既刊3巻)に決まりました!

 新装版として3巻まで発売した「兎オトコ虎オトコ」。3巻が出るまで長かった……。本当に長かった。10年です、10年です。待ちました。ええ、心の底から待ち望んでおりました。
 途中いろいろあって出版社が変わり、もはや3巻発売は夢なのでは?と思っておりました。でも、書店で平積みにされた本を見てやっと、夢ではなく続きが読めるんだ!と泣きそうになりました。

 反社会的勢力のご職業についている野浪と大学病院勤務の卯月。本来なら知り合いになることもなさそうな二人ですが、鉄砲玉に撃たれて路地に倒れているところを卯月に助けられたことから、野浪はシンデレラの靴ならぬ「ナイチンゲール・スズキの白衣」の持ち主を探すため、部下を大学病院に入院させます(なぜ「ナイチンゲール・スズキ」なのかは読んで確かめて♡)。

 卯月は助けたのが自分だとバレないようにしたいのに、偶然(!?)にも野浪の部下の担当医になったからビクビクの毎日。でもすぐに助けたのが卯月とばれちゃいました。

 野浪は卯月が探していた本人だと分かると女好きの自分が男に惚れるなんて、と苦悩しますが、諦めきれず猛プッシュを始めます。

「兎オトコ虎オトコ」1巻より ©本間アキラ/白泉社

 強面だし、迫力あるし、理不尽なこと言い出しては卯月に逃げ回られてばかりですが、実は純情。卯月が初恋なんですね。卯月が好きすぎて合意のない状態では手が出せない。寸止めまではいったけど、それ以上は手が出せない可愛いところのある野浪です。

 見た目は虎と兎そのままの二人ですが、意外に乙女な野浪と意外に肝が据わっている卯月。

 野浪が病室のカーテンを花嫁のベールに見立て、卯月に熱烈な愛の誓いをしちゃうところなんて究極の乙女。可愛すぎてゴロンゴロンしちゃいます。

 後日、卯月に「好き」だと告白され舞い上がっちゃう野浪は可愛いけど、野獣は野獣でした。

 嬉し恥ずかし気分だけど職業が職業なので危険がいっぱい。両想いになってからがさらに大変。組織内の敵対勢力に野浪の本命とバレ、卯月も狙らわれ始めるしでハラハラドキドキ。続きが……続きが気になる~~。早く4巻出て~~~!

 まだまだ大変なことのほうが多いと思うけど、二人には幸せになってほしいです。

 Web雑誌「花丸漫画」で、連載中です。

 連載しているから4巻、出ますよね、ねっっ!