1. HOME
  2. インタビュー
  3. 著者に会いたい
  4. 遠藤まめたさん『ひとりひとりの「性」を大切にする社会へ』インタビュー 身近な例から差別を解明

遠藤まめたさん『ひとりひとりの「性」を大切にする社会へ』インタビュー 身近な例から差別を解明

遠藤まめたさん=篠田英美撮影

 「LGBT」が広辞苑に登場したのは2018年。しかし、説明が間違っていた。気がついて指摘したのは遠藤さんたちだった。「天下の広辞苑が間違えるぐらいLGBTが具体的に何を指すのかを知らない人が大多数ということ」。試しに「恋愛」も引いてみた。「男女が互いに相手をこいしたうこと」。同性愛は想定されていない。

 女の子として育てられたが、七五三の着物も女子校のセーラー服も大嫌いで、高校生のときに身体の性と認識が一致しないトランスジェンダーだと確信する。意を決して教師に相談するも「思春期の勘違い」と、とりあってもらえなかった。大学で晴れて男として扱われるようになったのだが、今度は、女の時はダメ出しされた身だしなみや行動に、何のおとがめもなくなったことに「戸惑い」を覚えたという。

 「2010年代にLGBTがにわかに注目を集める一方で、深刻な性差別がなくならないという現実。その両方をちゃんと議論する人がいないと思って、この本を書いた」という。きっかけは、電通の新入社員高橋まつりさんがハラスメントを受け過労自殺した事件。当時電通はLGBTが働きやすい企業として表彰されていた。遠藤さんは、LGBTに対する差別は女性差別などあらゆる差別につながっているということをトイレ問題や結婚式のブーケトスなど身近な例で説き明かす。

 獣医師だが、いまはオンライン署名サイトの運営団体で働く。去年の春、女性にパンプスを強要する企業に抗議するキャンペーン「#KuToo」が話題になり、署名集めで後押しした。ほかにもLGBTの子と若者の支援活動や、教員研修での講演と忙しいが、突き動かすのは「生きづらくて仕方がないこの世の中を変えたい」という覚悟なのだろう。聞き手・久田貴志子 写真・篠田英美)=朝日新聞2020年4月11日掲載

>遠藤まめたさんが語る自叙伝への想い LGBTへのヘイトは自殺につながる