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「罠ガール」で知る狩猟 正体を見極めてマッチした罠を仕掛ける、動物との知恵比べ

文:佐藤直子

 登山が趣味の女性は「山ガール」、若手の女性農業事業者は「農ガール」、そして新たに注目されているのが「罠ガール」!? 「罠」と言っても人をだます小悪魔的女子ではありません。緑山のぶひろさんの『罠ガール』(KADOKAWA)はその名の通り、野生動物を捕まえる罠を扱う女子高生のお話です。

 農業や林業を営む人たちが農作物などを守るために行う罠猟。今、鳥獣被害を理由に離農する人が増え、深刻な問題になっているのだとか。罠猟免許を取得している緑山さんが、猟具の種類や機能、取り扱いのほか、動物との関係性など、田舎生活の中に普通に存在する罠の意味をほのぼのしたタッチで紹介しています。

 主人公の朝比奈千代丸(ちよまる)は、実家が農家で罠猟免許を持つ新米の罠師。幼馴染で同級生の昼間(ひるま)レモンらと野生動物から農作物を守るため、日々、罠を仕掛けて奮闘しています。農地を荒らす動物の正体は足跡や糞などから見分け、その動物の生態や習性に適した罠を仕掛けます。

 例えば、畑を荒らすイノシシには、ワイヤーやバネなど身近な素材で作った手製の「くくり罠」で挑みます。罠を踏むと仕掛けが外れ、ワイヤーの輪っかがイノシシの足をとらえる仕組みです。エサを置く場所は、いつも同じ道を通るイノシシの習性から居場所を特定。障害物をまたいで歩く彼らの習性を活かし、罠の手前に木や石を置いたり、仕留めた時に罠が外れないように丈夫な木に仕掛けをくくったりするのも罠を仕掛けるポイントなんだそう。

©︎Nobuhiro Midoriyama

 ほかにも、タヌキの駆除には「箱罠」、ビワの実を狙うシカには「シカよけネット」など動物によって様々な捕獲方法・防除対策を試みます。しかし、相手は動物。罠を仕掛けてもタヌキは箱を壊す、シカは1.5メートルのネットを楽々飛び越えて実を食べてしまうなど、思いがけない展開に千代丸やレモンがヤキモキさせられることもしばしば。その様子はまさに、動物と人間の知恵比べのようです。でも、次から次へと作物を荒らす動物にマッチした罠を仕掛けることや、すでに試した罠をパワーアップさせて設置する彼女たちはどこか楽しそうにも見えます。めげずに何度も動物に立ち向かうのは、農作物を守るためだけでなく、増えすぎてしまった動物や外来種の食い止めなど、実は生態系を守る役目を果たす役目があるからです。

 ところで素朴な疑問ですが、捕獲した動物に愛着がわいてしまう事はないのでしょうか?

 その問いかけに、主人公の千代丸は「動物たちを飼うために罠を仕掛けるわけではない」と言い切ります。罠猟を知らないと、捕まる動物がかわいそう、仕留めた動物の血を抜いたり、頭を落として解体したりするのは気持ち悪い、動物の命を奪うなんて残酷だという人もいるかもしれません。しかし、変わっていけないことを守るために罠猟は農家で必要なこととして当たり前に行われています。

罠ガール」で知る、罠師あるある!?

  • 血抜きの瞬間や動物の息の根を止める作業はいつまでたってもなれない
  • 都度命について考えさせられる
  • 動物は栗の木などの餌場を把握しているので、旬の時期に山へ行くと鉢合わせることがある
  • 関係ない動物が罠にかかったら逃がす
  • どこに誰が罠を仕掛けたか、知らせる名札を付ける

罠猟免許の資格って?

 狩猟免許は猟法ごとに、第一種銃猟免許(散弾銃、ライフル銃)、第二種銃猟免許(空気銃)、わな猟免許、網猟免許の4種類に分かれています。千代丸が持つわな猟免許は、聴力、視力、運動神経が求められる適性試験と、猟具の判別、架設の試験、狩猟鳥獣の判別などが問われる知識・技能試験があります。

 受講する人は男性が多いのですが、女性も増えてきています。自宅周りの害獣駆除など生活のために取得するそうです。