福岡市の出版社、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)が文学ムック「ことばと」を創刊し、すでに2刷7千部と好調な売れ行きだ。昨年4月に終刊した文学ムック「たべるのがおそい」の後継誌で、評論家の佐々木敦さんが編集長を務める。
前身の「たべるのがおそい」は翻訳家で作家の西崎憲さんが編集長を務め、2016年の創刊から7号を重ねた。今村夏子さんの「あひる」と宮内悠介さんの「ディレイ・エフェクト」の2作を芥川賞候補に輩出したことでも話題を呼んだ。
後を継いだ「ことばと」には、「言葉と、他の何か」「言葉と、わたしやあなたを含んだ誰かについて」考えることのほか、空を羽ばたく「言鳩」の意味が込められているという。佐々木さんは創刊号の冒頭で「このささやかな、でも大いなる飛翔(ひしょう)を、ぜひ見守ってください。そして出来れば、一緒に飛んでほしい」と記した。
4月、10月の年2回刊行。創刊号には、お笑い芸人・作家の又吉直樹さんとミュージシャンの柴田聡子さん、佐々木編集長による言葉をめぐる座談会のほか、作家の阿部和重さんや保坂和志さん、小林エリカさん、『デッドライン』で作家デビューした哲学者・千葉雅也さんの新作小説が並ぶ。
「ことばと新人賞」として賞も創設する。応募は6月末まで。詳細は書肆侃侃房のHP。(板垣麻衣子)=朝日新聞2020年5月13日掲載