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「2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義」 「言葉の力で未来を」8年前の約束

 昨年8月、47歳の若さで他界した瀧本哲史氏。エンジェル投資家・経営コンサルタントにして、京都大学の教壇に立つ教育者。著作では繰り返し「未来は君たちの手で変えられる」と伝えてきた。本書は、その瀧本氏が2012年6月30日に東京大学で行った特別講義を収録。全国から集まった29歳以下約300人に向け、飛ばされた“檄(げき)”がライブ感たっぷりに再現される。

 自分にしかできない何かを求めながらも、踏み出す勇気を持てない若者たちに、瀧本氏はエールを贈ることを諦めない。「多数派」や「権力」の前に立ちすくむな、君たちが使える“武器”はいくらでもあるのだと、思考の枠を広げる手助けをする。

 武器とは例えば「交渉」の力。権力から自由を奪われようとした時に、真正面から衝突するのではなく、「なぜ相手がそう思うか」を突き詰めて、共に解決策を探す。交渉の目的は、自利の最大化ではなく、仲間を増やし、新たな未来をつくることなのだと説く。まず最初に学ぶべきはロジックとレトリックを備えた「言葉の力」であるとも。

 タイトルに込められた“約束”に思う。その時が訪れたとして、彼は一体どんな生き方を選んだのだろうと。=朝日新聞2020年5月16日掲載