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「鉄筆とビラ」書評 むせ返るように伝わる高校生の思考と感情

評者: 本田由紀 / 朝⽇新聞掲載:2020年06月06日
鉄筆とビラ 「立高紛争」の記録1969−1970 著者:都立立川高校「紛争」の記録を残す会 出版社:同時代社 ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784886838711
発売⽇: 2020/03/24
サイズ: 21cm/205p

鉄筆とビラ 「立高紛争」の記録 1969-1970 [編]都立立川高校「紛争」の記録を残す会

 ベトナム反戦運動や日米安保延長問題に日本が揺れていた1969年10月22日未明、都立立川高校は「教育秩序に総反乱を!」と要求する一部の生徒によってバリケード封鎖された。実行した先鋭的な生徒集団(バリ派)と、他の多くの生徒、そして教員らの間には、以後数カ月にわたる激しい紛争が続き、バリ派の主導者の退学処分と、生徒らの要望に基づく自由選択科目の新設という形で、年度末までに収束を迎えた。
 鉄筆で書かれた膨大なビラを主な資料とする、この紛争の克明な再現からは、当時の高校生らの、荒々しいが懸命でかつ幼さもある思考と感情が、むせ返るように伝わってくる。
 「自己否定」を突き付けるバリ派により打ちのめされながらも、署名や話し合いを通じて民主的に学校生活を立て直そうとする生徒らの様子が胸に迫る。
 現在の高校は大きく変容を遂げた。だからこそ、当事者自身がつづる戦後史の一幕は貴重である。