『ことばの危機』
副題は「大学入試改革・教育政策を問う」。東大で昨秋開かれたシンポジウムの内容を拡充して書籍化した。現状の改革路線では「人間と社会のあり方そのものを問い返していく奥深い知性」が損なわれていくと5人の教授陣が警鐘を鳴らす。
★阿部公彦、沼野充義ほか著、東京大学文学部広報委員会編 集英社新書・924円
『理系の文章術』
一般向けの著書もある分子古生物学者による書き方教室。一番大切なのは「読者の立場になって考える」ことだと説く。文は短く、一つのパラグラフでは一つのトピックだけを述べ、適切な接続表現でつなぐこと。短時間で内容がわかる「あらすじ」のような文章が基本だという。
★更科功著 講談社ブルーバックス・1100円
『ルポ 技能実習生』
工場などの単純労働に就き、人手不足の日本を陰で支える外国人技能実習生。借金をしてまで日本をめざすのはなぜなのか。失踪する実習生が後を絶たない理由は――。ベトナム人実習生の故郷や現地の関係機関、失踪した実習生らに取材し、「複雑怪奇な制度」の問題点をあぶり出す。
★澤田晃宏著 ちくま新書・946円
『地方議員は必要か』
ゴミ捨て場の問題や商店街の活性化など身近な課題を扱う地方議員のことを、私たちはあまり知らない。取材班が各地の議員3万2千人にアンケートを実施。「選挙はお金がかかる?」「やりがいは?」。回答から、議員たちの本音や抱える課題を明らかにしていく。
★NHKスペシャル取材班著 文春新書・902円
『萩原編集長 危機一髪!』
山岳雑誌「山と渓谷」などの編集長を務めた著者が、自身が体験した遭難未遂とそこから得た教訓をつづる。落石、雪崩、落雷、転落、道迷い、強風、熊……。山の素晴らしさとともに雪山や悪天候の恐ろしさが伝わってくる。危機的な状況から引き出される教訓が心にしみる。
★萩原浩司著 ヤマケイ新書・1100円=朝日新聞2020年7月4日掲載