なんでこんなに録画を失敗するのか、と先日呆然(ぼうぜん)とした。月に一度はやらかしている。理由はいつも残量不足だ。〈全八話八時間連続・日本初放送〉みたいなスペックのドラマなのだが、失敗に気づいたのは八話目を放送している時のことだった。どうも機械が動いていないなと確認すると、レコーダーの残量がゼロになっている。第一話しかまともに録画できていなかった。
再放送再放送、とあたふたしながらチャンネルのサイトの中のそのドラマのページを開くと、無情にも「次の放送予定はありません」と表示がある。いや今八話目の放送をしているじゃないですか、対応が早すぎないか。売り切れたから営業時間内でも店は閉めます、みたいなことをテレビ局のサイトにやられている。わたしは、番組を見たかったという以上にまた残量を管理しきれず番組を諦めることになったということにがっかりして、少し前に録画したその局の別の番組を見始める。すると〈全八話八時間連続・日本初放送〉のアナウンスが陽気なBGMと共に流れる。本当に落ち込む。
録画に失敗している間、わたしは何をしていたのだろう。言わなくていい愚痴を「北風と太陽」の北風のように友人に言っていたことを思い出して、北風のように愚痴を言っている(要はわかってもらおうと思って必死になりすぎて失敗している)自分に「そんなことより家に帰ってレコーダーを確認しろ!」と怒鳴りつけたくなった。
五月にサブスクリプションサービスに入り、レコーダー管理から解放されたように見えたわたしだが、結局「サブスクは録画を整理する張り合いがない」という意味不明の理由で、七月からテレビのチャンネル契約に舞い戻ってしまった。ある人が「レコーダーを扱う喜びって録画を観(み)て消すときでしょう」と言っていたのを思い出す。「消せる」と「録(と)れていた」の一進一退の戦線は続く。日々の確実な勝利のために、北風のような愚痴は控えようと思う。=朝日新聞2020年7月22日掲載