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BL担当書店員のイチオシ! 幼なじみBL2選

2人の人間性と一人称「僕」のギャップに萌える(井上將利)

 長い時間を共にし、友情や愛情、信頼関係を築いてきた幼なじみという関係性は特別なもので、そんなかけがえのないテーマを描いたnojiさんの「焦がれて焦がして」(ふゅーじょんぷろだくと)もまた特別な作品です。

 田舎育ちの古山悠次と常川総一は幼少期からの幼なじみで、実家も隣でいつでもどこでも一緒だった2人。でも悠次にとって幼なじみの総一は初恋相手でもありました。その想いは秘めたまま時は経ち、2人は別々の道へ。

 先に田舎を出てサラリーマンになった総一の後を追うように、料理人の悠次は田舎を出て自分の店「プレール」を切り盛りするように。けれども自分の気持ちに折り合いがつかず、お店のことを総一に伝えることなく3ヶ月が過ぎようとしていました。ところが、ある日、買い出し中の悠次は偶然総一に再会し……。という場面から始まる本作。

 その後、悠次の店で食事をするようになる総一との関係を描いていく作品なんですが、とにかく2人の人間性が良いというか、惹かれるというか、ぜひ注目して頂きたいポイントです!

 悠次は漁師の実家を手伝っていたこともあり、幼少期から急激に逞しく成長。その変貌ぶりに総一も驚いていましたが、そんな外見とは裏腹に繊細な心の持ち主なんです。総一と再会した後、一人店に戻った時の魂出ちゃいそうな「はぁぁぁぁぁ~~」からの「…かっこいっ」っていうセリフがなんとも健気で愛らしく、店に泊まった総一に翌朝お弁当を用意して「流石に弁当はちょっと重いか…」と自己嫌悪しちゃったりと、感情の移り変わりが忙しく可愛いやつなんです。

 そして総一はというと、気が強そうに見えて思慮深く、悠次の良き理解者としての一面があって、そして何より……一人称が「僕」なんです! これは超個人的な意見なんですが、総一は絶対に「俺」って言いそうなキャラクターなんです。でもそれが「僕」なので簡潔に言うと萌えるんですよね(笑)。

「焦がれて焦がして」©noji/FUSION PRODUCT

 そして食事の場面も本作の見どころ。悠次の作ったご飯を食べる総一を目の前で眺める“悠次目線”で描かれているので、おそらく悠次も同じだろうと思いながらにやけてしまいます!

 そんな2人の個性が絶妙なバランスで混ざり合っていき、読者に愛情が伝わる本作。とにかく2人の“幼なじみ感”が色濃く出ていて、どんなにすれ違っても本心では理解しあっているような安心感や2人だけの特別な距離感が感じられるはず!

親友から恋愛関係に変化する“ジワジワ感”がたまらない!(キヅイタラ・フダンシー)

 昔から知っている人との関係がひょんなことから変わって、大切な存在になっていく……。そういうシチュエーション、とても好物です(笑)。数ある作品の中でも、恋愛・コメディ・切なさ成分が絶妙なバランスで一押しのこちらを紹介します!

 せいかさん「親友ってそこまでしなくちゃいけないの?」(新書館)

 「お前を親友と見込んで頼みがある 賢人、俺の前立腺をお前に託したい!」と、幼なじみで親友の一星から衝撃的なお願いをされる1コマから始まります(笑)。陸上が大好きで健康男子の一星でしたが、突然性器が小さくなっていくという謎の奇病に。治療手段として前立腺マッサージをしなくてはならなくなり、悩んだ結果相談したのが賢人だったのでした。賢人にとって一星は親友でもあり、幼少期の思い出からヒーローのような存在でもあったが故に、そんな相手のお尻を開発することを断固拒否。かわりに医者から紹介された相談先に付き添うことになったのですが、そこはまさかのM性感風俗で……。付き添ってしまったが賢人の運のツキ、一星が涙を流すほど本気で葛藤していたことを知って、協力して治療(という名目の開発)を始めることになります。

 ちなみにこの時点ではまだ恋は生まれてません(笑)。友情のために覚悟を決めたはずの賢人ですが、いざその瞬間になると、いちいちものすごい顔をして施術?をしていて笑っちゃいました。親友のお尻をいじるなんで、すんなり受け入れられないですよね(笑)。でもBL漫画では逆に新鮮なリアクションで面白さ倍増ポイントです。

©️せいか/新書館

 治療が進むにつれ、賢人は一星のことが何だかかわいく見えてきてしまったり、一星も指だけじゃなくてもっと大きなものを入れてみたら……なんて考えだしてしまったり、少しずつ“親友”の枠を超え始めていく2人。この関係の変化の仕方のジワジワ感がとても良いのです! はじめは恋愛感情なんて持ち合わせていなかったのが、それぞれ意識をするようになって、それが恋だと気付く――。そんな流れが丁寧に描かれていて、時にすれ違いをしながらも、親友という大切な関係との狭間で揺れるところとか、すごく良いシーンですよ~! 恋愛経験が乏しかった2人が「これが恋なのかも」と自覚する瞬間の感情が溢れている感じが最高にキュンキュンしました!

 作中の小ネタも素晴らしいです。賢人は趣味が折り紙なのですが、落ち着きたいときに作る作品のクオリティが高い(笑)。折り紙の星に囲まれて思い悩むシーンも印象的でした。M性感風俗のお姉さん・あやさんも2人を支えてくれるナイスキャラで、エロスを漂わせながらもおっとりしていて思いやりもあって素敵でした。随所でクスッと笑わせてくれながらも、しっかりLOVEも堪能できる作品です。ぜひ読んでみてくださいね~♪