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コロナ下、今だからこその思い 馳星周さんら芥川賞・直木賞贈呈式であいさつ

芥川賞の高山羽根子さん(右)と遠野遥さん。直木賞の馳星周さんはリモートで参加=日本文学振興会提供

 第163回芥川賞・直木賞の贈呈式が8月28日、東京都内であった。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、壇上にはアクリル板のついた演壇が置かれ、受賞者らはマスク姿のままでスピーチ。飲食を伴うパーティーは中止された。

 「首里の馬」(新潮3月号、新潮社刊)で芥川賞が贈られた高山羽根子さんは冒頭、「こんな大変なときにすみませんと、このひと月ふた月で何度口に出したろうと思います」と語り出した。何一つ例年通りにはいかないなか、「小説を読むという、正直に申せば人の命を直接救いうるとはとても言いづらい事柄に、多くのかたが一喜一憂してくださることが、とてもいとおしい」と話した。

 一方、デビュー2作目の「破局」(文芸夏季号、河出書房新社刊)で芥川賞を受けた遠野遥さんは「この受賞を機に、また一層がんばって書いていきたい」と決意を新たに。「まだ書きかけなんですけど、3作目の小説はきっと『破局』よりおもしろくなると思います」と30秒ほどで簡潔に述べた。

 『少年と犬』(文芸春秋)で直木賞が贈られた馳星周さんは、故郷の北海道浦河町からリモートで参加。7回目の候補入りで受賞となったことに「30代とか40代ではなく、50代の中ごろで直木賞をいただけたのはよかった。もし若いときにいただいてたら、もっと傲慢(ごうまん)な人間になっていたかもしれません」。コロナ禍のただ中に故郷で聞いた受賞の知らせも「俺らしくて、いいんじゃないかな」と喜びを語った。(山崎聡)=朝日新聞2020年9月2日掲載