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BLラバーの書店員がおすすめする「三角関係なBL」2選

拗らせた恋愛感情から生まれる歪な三角関係(井上將利)

 「意中の人をライバルと取り合う!」みたいな、ある種の闘いの構図となることも多々ある“三角関係”。3人という登場人物設定により物語の幅は劇的に広がり、キャラクターの個性や行動が絡まるほど深みも増していく、非常に魅惑のテーマです。

 今回ご紹介するのは一言で「三角関係」と説明するにはあまりに歪で、捻じれた恋愛模様を描いた、いちかわ壱さんの「リセット」(徳間書店)

 物語の核となる3人は同じ高校のバスケ部に所属していて、1年生でマネージャーの白石冬真(とうま)とプレイヤーの槙村蘇芳(すおう、通称:槙)、そして3年生でキャプテンの崇宮蒼(たかみや・そう)。ちなみに冬真と蒼は幼なじみということで、既に同級生・先輩後輩・幼なじみ……?とザワザワする要素が満載なわけです(笑)。

 ただし物語の冒頭では三角関係ということは無く、実は冬真と蒼は既に恋人の関係にあります。恋人に過剰に依存することから失恋を繰り返し、その度に冬真に泣きついていた蒼。幼なじみとしてずっと一緒に過ごしてきた冬真はそんな彼に好意をもっていて、ある日、傷心中の蒼に「僕がずっと傍にいるよ」と手を差し伸べたのでした。以来、2人は秘密の関係となり冬真は毎週のように蒼の家に泊まり込む生活に。

 そんな2人の秘密の関係に偶然にも気付いてしまったのが、同級生の槙でした。槙にとっては大切な友人と憧れの先輩が恋愛関係⁉︎と内心穏やかでないのですが、その秘密は胸にしまったまま2人と過ごしていきます。

 しかし槙は冬真と会話していくうちに2人の関係性に不気味な違和感を覚えるのでした……。

 ここから物語は槙の視点から見る冬真・蒼の異様な感情に触れていきます。実は冬真は傷心中の蒼につけ込んで関係を持ったことにずっと罪悪感を持っていて、「自分は愛されていない」「すぐ終わる恋」と一方的に諦めた感情を持っていました。そして蒼はというと、冬真のどこか冷めた感情に不安を感じつつも「誰にも渡さない 絶対に」という狂気的な愛情表現で冬真を縛り付けるのでした。

「リセット」Ⓒいちかわ壱/徳間書店

 そんな2人の関係が腑に落ちない槙は、さらに踏み込もうと蒼に近づくのですが「これ以上関わるな」と言わんばかりの牽制をされてしまいます。そして、冬真に自分の気持ちと向き合い、大切にしてほしいと感じる槙は「本当に蒼を好きなのか……?」という疑念を冬真にぶつけ……。

 本作は、3人のキャラクターのうち、誰に視点を置くかで見どころも変わってくるのが面白いところ。僕個人としては槙という真っ直ぐな存在が冬真と蒼の歪な関係に対して光を灯そうと懸命にもがいていく様に「頑張れ、槙!」と応援してしまうほど感情移入してしまいました!

 しかし、3人の想いが交錯する捻じれた三角関係の行方は予想だにしない方向へ向かっていきます。ストーリー展開から目が離せない本作、絶対に最後の1ページまで読んで下さい! そして、雑誌「Chara」では本作の続編『リブート』も連載中です!

「親友」と「恋人」の違いって?(キヅイタラ・フダンシー)

 基本2人がイチャイチャ、ヤキモキしている話が好みなので、あからさまな三角関係ってドロドロと重たすぎる話になりそう……という気もしてしまい、あまり積極的に手を伸ばすテーマではありませんでした。でも今回ご紹介の作品は、気持ちの矢印のすれ違いがいいエッセンスになっていて、ちょうどいい切なさも加わって楽しかったです! こちらです!

 多摩緒べべさん「親友と彼氏の定義」(竹書房)

 大学生のたくみと瑛太は、親友でかつ、いわゆる“セフレ”。瑛太の部屋に入り浸り、食事をしたり、映画を見たりするような感覚で、体を重ねる――。たくみは恋愛になんて意味はないという考えの持ち主。一方、瑛太も告白されれば付き合うし、女でも男でも、誘われればHする軽い男。それでも、親友であれば、終わることのない関係が続くんだと、たくみは思っていました。

 そこに現れたのが瑛太の“恋人”だと主張する男、誠司。いたって普通で真面目で、1度瑛太を抱いたことで恋人気分になっている誠司に興味が湧いたたくみは、うまく言いくるめて誠司とも体の関係を持ちます。いつの間にか誠司は瑛太ではなく、たくみに会うために瑛太の部屋を訪れるようになり、たくみも誠司の見た目とは裏腹でアグレッシブだけど気持ちいいHに次第にハマっていって……。

 3人が求めるそれぞれの関係、根本は一緒なのかもしれないけど、ちょっとずつ違う。恋をしたことがなくて、恋愛なんていらないと思っているたくみは、誰よりも確かな関係を欲しがっていて、その理想を「親友」だと思っていたのかもしれません。誠司と出会ったことで「彼氏」ってなんなのか、自分が欲していたものはなんなのかを見出していくのが良かったです。誠司もとてもまっすぐな性格で好感度高し! 好きになった相手を思いやる姿勢や、たくみからの連絡を見て嬉しそうにする表情にキュンときます!(笑)

©多摩緒べべ/竹書房

 あと、個人的に本作のキーアイテム、“イヤホン”がとっても印象的でした。ONになっているかいないかが気持ちも表していて、読んでいて「あ、ここOFFだったんだ……!」とゾクゾクしました。(詳しくは作中で♪笑)

 一緒にいて楽しさや幸せを感じて、大切に思える「親友」と「恋人」の違いってけっこう曖昧なものなのかもと、自分の恋愛観にもふと思いを馳せてみたり……。みなさんもお手に取って思いに耽ってみてください。