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映画「十二単衣を着た悪魔」主演の三吉彩花さんインタビュー 母親の二十余年を生きる

文:坂田未希子、写真:篠塚ようこ

怖い女になるには能力がいる

――本作は内館牧子さんの小説が原作ですが、原作のある映像作品に出演される時、三吉さんが心がけていることはありますか?

 原作があるときは必ず読んでいます。脚本に書かれていること以外のことも書かれているので、作品の世界観をより深く知ることができるので。原作では映画のラストシーンの後の話も描かれていたり、内容も盛りだくさんなので、作品を観る前でも、観た後でも楽しめると思います。ただ、原作を読んで演技に直接生かすことはあまりありません。今回も監督と色々話しながら作り上げていきました。

――三吉さん演じる弘徽殿女御は、光源氏の兄・一宮の母親。『源氏物語』では、光源氏を敵視する悪女として描かれているようですが、ご存知でしたか?

 『源氏物語』は高校の授業で習ったぐらいで、登場人物も光源氏ぐらいしか知らなくて、弘徽殿女御は今回初めて知りました。こんな位置付けのキャラクターがいたんだなという印象ですね。

© 2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー

――演じてみてどうでしたか? 三吉さんも“芯の通った女性”という印象がありますが、ご自身と似ている部分はありますか?

 演じるのはとても大変でした。雷が弘徽殿女御と出会って成長していく物語でありながら、彼女自身も変化し、母親として子どものことを想い、いろんなことを犠牲にしながら力強く生きていくという表現は難しくて。ですがその分とてもやりがいを感じました。私もわりと、思ったことは口に出して言うタイプなので、そういうところは似ているかなと思います。こんなに怖くはないですが(笑)。

――名言もたくさん出てきますね。好きなセリフはありますか?

 いっぱいありますが、「カワイイ女はバカでもなれる。しかし怖い女になるには能力がいる」というセリフは、脚本を読んでしびれました。セリフのひとつひとつに重みがあるので、違和感なく言えるか心配もありました。

初の母親役は両親を参考に

――本作は、雷が平安時代にトリップしてから二十数年の年月が流れていきます。弘徽殿女御も若々しく力強い女性から大人の女性へと変化していきますね。

 今回、時系列で撮影していったのですが、一番最初に登場する場面は、若くて、力強くて、怖いものは何もない、我が道を往く!という強気な女性を印象付ける、重要なシーンでした。弘徽殿女御としての圧倒的な存在感を出さなくてはいけなくて、緊張感のあるシーンになりました。

 年月が経つと、白髪が混じってきたり、羽織の色が変わったり、見た目にも変化がありますが、若い時は声色を少し高くして、だんだん低くしていくなど意識しました。衣装が本当にきれいで、着物もカツラも重たかったのですが、着ることができてうれしかったです。

© 2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー

――母親役は初めてですか?

 そうですね。ですが、弘徽殿女御は、普通のお母さんではないので、いわゆる「お母さん」みたいなイメージを気にせずできたので、よかったなと思います。息子とのシーンは、自分の立場もあるので、距離感とかどこまで親子のニュアンスを出したらいいか難しかったです。最近、自分の両親を見ていて、やっぱり親って、自分の子どもが何歳になっても愛おしい子どもであることに変わりはないんだなと感じているので、両親のそういうところを少し参考にしながら演じました。

――普段本は読みますか?

 たまに読みます。小説はあまり読まなくて、ビジネス本とか、統計学の本、自己啓発本、心理学の本とかが多いですね。そういう方に興味があります。時々読み返しているのは『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』(アダム・グラント著/三笠書房)です。誰もが持っている創造力を高め、仕事に生かしていくヒントを伝えるビジネス書で、面白いというか、参考にしやすいというか。そういう考え方もあるのだなとか、自分も取り入れてみようかな、これはちょっと違うかな、などいろんな発見がありますね。

 学校の勉強は苦手でしたが、ビジネスとか、そういう勉強は好きです。いつかなにか自分でもビジネスを立ち上げられたら楽しそうだなと思っています。具体的なものはないですが、いろんな人が参加できる、為になるものがいいなと思っています。