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クリハラタカシ「ゲナポッポ」 ノンビリした時間が流れている本

『ゲナポッポ』から(C)クリハラタカシ/白泉社

 色が美しい。絵本のように懐かしい。落ちる影すら明るい世界。オールカラーの世界に漂う、白いゲナポッポ。謎の存在だ。オバケのようでもあるし、雲にも似ている。昼寝が好きで、ドーナツの「穴」が好物。マンガのフキダシみたいに色がなくて、フワフワ浮いている。誰にでも遠慮なく話しかけ、いつもちょっとしたトラブルを巻き起こす。本書を開いたら最後、読者もゲナポッポの世界に巻き込まれてしまう。

 絵本とマンガのハイブリッド。絵本のようにゆっくり、ゆっくり、ページをめくる。ノンビリした時間が流れている本だ。同時に、マンガを読むみたいに、ページの上を視線が楽しくころころ転がる。著者は出しおしみすることなく、最高のアイデアを全ページにふんだんに盛り込んでいる。見ること、読むことの喜びがあふれて、こぼれそうなほど。本書を開いた読者は、最後になっても、ページを閉じたくない気持ちにきっとなる(ずっとページを開いて部屋に飾っておきたくなります)。=朝日新聞2020年11月21日掲載