豊田市美術館、東京国立近代美術館、兵庫県立美術館〈編著〉「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」 ジェンダー研究の視点で14人の作家紹介
フェミニズムに関する本は赤やピンクの装丁のものが多いなか、シルバーとイエローの表紙が印象的だ。「アンチ・アクション」は美術史学者の中嶋泉さんが生んだ言葉で、戦後、欧米から日本に流入したモダンアートの二つの潮流――アンフォルメルとアクション・ペインティング――に影響を受けながらもそれにおもねることなく、独自の表現を追求した「アーティスト女性」たちの芸術活動を指す。本書は、この動向を研究した中嶋さんの著作をもとに集めた、14人の美術作家による同名の展覧会のカタログである。
中嶋さんの著書にも小さなモノクロ図版は入っていたが、大きくフルカラーで印刷された作品を本書で改めて眺めると、戦後の、開放感に溢(あふ)れた自由な空気をそのまま絵に反映させたような作品群の力強さが、まっすぐに伝わってくる。
「〇〇女子」や「女性〇〇」という言い方は日本中に転がっているが、美術界も例外ではない。「女」というカテゴリーで表現活動の本流から切り離され、「男性性」が象徴するものの対極にある質を見いだされ、作家も彼女たちの作品も、男性と彼らの作品の下位に置かれる。その違和感を、ダイレクトに感じてもらえるはずだ。
展示は現在、愛知県の豊田市美術館で開催中で、その後は東京、兵庫へと巡回予定のようだ。実際の作品の迫力を体験しに、是非そちらも訪れたい。=朝日新聞2025年11月1日掲載