1. HOME
  2. コラム
  3. 図鑑の中の小宇宙
  4. 「訴えたらむしろ負ける!! ハラスメント図鑑」“ハラハラ”にご注意!

「訴えたらむしろ負ける!! ハラスメント図鑑」“ハラハラ”にご注意!

「訴えたらむしろ負ける!! ハラスメント図鑑」(大和書房、著:こじらじ、絵:ネゴシックス)より

 「コロハラ」「リモハラ」「キメハラ」――。今年だけでも、さまざまな「〇〇ハラ」という言葉が生まれました。でも、不快に感じたことや嫌な気持ちになったことを何でも「ハラスメント」という言葉で片付けてしまうのは、ちょっと乱暴な気がしませんか?

 「訴えたらむしろ負ける!! ハラスメント図鑑」は、そんな何にでも「ハラスメント」とつける風潮をブラックユーモアたっぷりに風刺した一冊。著者のこじらじさんが、訴えたらむしろ負けそうだけど日常生活で遭遇する“あるある”な困りごとを「〇〇ハラ」と名付け、「街なかで」「メディア・社会で」などのシーン別に紹介しています。芸人でイラストレーターのネゴシックスさんによるシュールなイラストも相まって、ページをめくるたびに苦笑いの連続です。

 個人的に心の底から共感したのが「パズルのピースはめろハラ」。Webサイトのログイン画面などに出てくる、ロボットではないことを証明するためのセキュリティシステムに煩わしさを感じる人は多いのではないでしょうか。本書で例に挙げられているパズル式だけでなく、信号機や車など指定されたモノが映っている写真を選ぶ画像選択式の認証も悩ましいもの。筆者も間違えてしまいがちですが、むしろどっちつかずの微妙なものを選んでしまう不確かさこそ、人間なのではないかと思ってしまいます。

「訴えたらむしろ負ける!! ハラスメント図鑑」(大和書房、著:こじらじ、絵:ネゴシックス)より

 「それをハラスメントと呼んだらもう何もできません」というものばかりを集めた本書。読後には、「ハラスメント」という言葉を使うことについて改めて考えさせられます。「〇〇ハラ」という言葉が乱用されると、「ハラスメント」という言葉自体が軽くみられてしまい 法的責任を追及すべき重大なハラスメントさえも軽視されてしまう危険もありそうです。簡単に「ハラスメント」と名付けて一方的に切り捨てず、なぜその言動を嫌だと感じるのかを考え、相手に伝えていくことも必要なのかもしれません。そうでないと、「ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)」になるだけで、ハラスメントのループから抜け出せなくなってしまいそうです。