本屋さんから生まれた「アメリカンブックショップ」
「アメリカンブックショップ」は東京・赤坂の書店「双子のライオン堂」が作ったオリジナルゲームです。ゲームデザイナーは新澤大樹さん。書店員が仕事中に「本の整理をしている」ように見せかけて遊ぶというストーリーを背景にしたゲームだけあって、カードにはハートやスペードではなく、『銀河鉄道の夜』『ドン・キホーテ』『失われた時を求めて』『老人と海』をモチーフにしたマークが書かれています。
★ゲームの準備
・4色13枚ずつ(0が2枚、1~11が1枚ずつ)計52枚のカードを使います。
・3人で遊ぶ際は1色を抜きます。4~5人の際はすべてのカードを使います。
・カードを良く切り、各プレイヤーに配りきります。5人の場合は10枚ずつ配り、残った2枚は使いません。
★プレイ手順
・親を決め、親から順に時計回りにカードを1枚ずつ出していきます。この際、親が出したカード(リードといいます)と同じ色のカードを出します(マストフォローといいます)。同じ色がなければ、どのカードを出してもかまいません。
・カードを出すときには場に出ているカードの合計を言います。出したカードを含めた合計が一定の数(3人なら14、4人なら16、5人なら17)以上になったら、出した人がカードをすべて引き取ります。
・もし、1巡して一定の数に達しなかった場合は、親の出したカードと同じ色のなかで最も大きい人がすべて引き取ります。さらに、同色のカードが親が出した色のゼロが2枚だけの場合、親が引き取ります。この1巡をトリックと呼び、誰かがテイクするわけですね。
・カードを獲得した人が次の親になります。こうして、いずれかのプレイヤーの手札が尽きるまでトリックを続けます(尽きた瞬間ではなく、そのトリックは最後までプレイします)。ここで1ラウンド終了です。
・手札が残ったプレイヤーは、好きな枚数を自分が獲得したカードとして加えることができます。その際、裏向きに出して、全員が出そろったところで表に向けます。
★勝利条件
・獲得したカードは1枚につきマイナス1点。ただし、各色で最も多くのカードを集めたプレイヤーはその枚数だけプラス1点となります。プレイヤーの数だけ、ラウンドを行い、最も得点の高いプレイヤーが勝者となります。
★さあ実戦
今回参加したのは好書好日に加え、きょうだいサイトの「telling,」「sippo」「GLOBE+」「かがみよかがみ」の編集部有志です。5人で対戦しました。
勝利への道は同じ色のカードを多く集めること。でも1番多く集めないとマイナスとなってしまいます。1回のトリックで取れる同色カードは最大で5枚。「確実に一番多い枚数になる7枚をとるには少なくとも2ラウンドかかるわけですね」と編集部T。しかし、親が大きな数でリードして、同色を集めようとしても、1ラウンドはともかく、次のラウンドで5枚すべてが同じ色とはなりません。たいてい同色のカードは3~4枚。欲しくはないカードが1~2枚は交じります。
取ったカードはみなに見えるように場に出しておきます。プレイヤー同士の各色の枚数差、そして各色の残り枚数を確認しながらラウンドを進めていきます。このあたりのカウンティングができるようになると、このゲームの楽しさと苦しさがわかってきます。
「これ後出しの方が有利じゃない」「何をリードしていいのかわからない」。そんな声が飛び交う中、最後のラウンドは、「かがみよかがみ」Mくんが後出しの利点を生かした華麗なプレイで高得点。しかしトータルでは、「なるべくカードを取らない作戦」(?)を敢行した編集部Tが勝利しました。
スティーブンソンの小説がモチーフ「ボトルインプ」
「ボトルインプ」は『宝島』『ジキル博士とハイド氏』などで知られるスティーブンソンの小説「壜の小鬼」(邦題は岩波文庫版)をモチーフにしたゲームです。小鬼が封じられた不思議な壜をめぐる物語で、壜は持ち主の望みを何でもかなえますが、持ち主が死ぬ前に手放さないと死後永遠に地獄の火に焼かれ続けるという物騒なしろもの。ゲームもまた、この壜をいかに利用するかが問われます。
★ゲームの準備
・1~37の数字が書かれたカードと「悪魔のボトル」を使います。カードは赤・青・黄の色に分かれています。赤は大きめの数字が多く、黄は小さめの数字が多く、青はまんべんなく数字が散らばっています。またカードにはコインマークが書かれており、最終的に集めたカードのコインの数が多い人が勝利します。
・19のカードを場に置き、ボトルを乗せます。
・親を決め、残りの36枚のカードをすべて配り切ります(2人なら18枚、3人なら12枚、4人なら9枚ずつ)。
・各プレイヤーは、19のカードの下に裏向きで1枚カードを仕込みます。このカードは1ラウンド終了後に、マイナス点として、負けたプレイヤーがひきとることになります。
・すべてのプレイヤーは手札から1枚、自分の左隣のプレイヤーに渡します。次に右隣のプレイヤーに1枚渡します。これで準備完了です。
★プレイ手順
・まず親が1枚カードを出します(リード)。続いて時計回りに親が出したカードと同じ色のカードを出していきます(マストフォロー)。同じ色がなければ、どの色のカードを出してもかまいません。一巡して最も大きいカードを出した人がすべてのカードをひきとります(色は関係ありません)。そのカードに書かれたコインの数を足した数が得点となります。ここまでが1トリック。しかし、これでは運任せのゲームですね。ここでボトルが重要になってきます。
・一巡して、ボトルの下のカードの数以下の数字が出た場合、そのなかで最も大きい数字を出した人がカードを引き取れます。スタート時は「19」ですから、スタート時点の最強カードは「37」ではなく「18」になります(いわゆる「切り札」ですね)。ただし、このパターンでトリックを得た場合、カードとともにボトルも引き取ることになります。このボトル、最後まで持っていると得点はすべて没収されてしまうのです。
・ボトルを引き取ったプレーヤーは、ボトルの下にあるカードの代わりに、さきほど出したカードを下に置きます。(18でトリックを取った場合19の代わりに置く)。以降はカードを引き取ったプレーヤーが親となり、手札がなくなるまで同様の手順を繰り返します(2人だと17回、3人だと11回、4人だと8回)。ここで1ラウンド終了です。
★ゲームの終了
ラウンド終了後、ボトルを持っている人は得点が没収されたうえ、開始時に裏向きにされたカードに書かれたコインの数だけマイナス点になります。1ゲームは、「誰かが300点を超えたら終わり」とか「参加人数の数だけゲーム」とか、複数回のラウンドで決めるほうが楽しいです。
★いざ実践
今回は4人で対戦。4ゲームで勝者を決めます。第1ラウンド、誰もが勘所をつかめないまま進むなか、「GLOBE+」Hさんが、あれよあれよという間に大量80点をとって圧勝。「そんなに(点を)取れるものなの?」との声があがります。
このゲーム、ラウンド中にボトルの下の数字はどんどん小さくなっていきます。つまり、「切り札」がどんどん変わります。いつのまにか「切り札」が手元にあることになりますが、それを切ろうにもマストフォローのために出せなかったり、出したくなくても出さざるを得なくなったり。終盤になればなるほど、小さい数字を持っているとボトルを引き取る可能性が高まります。黄色の1~3あたりは危険ですし、青の4や6もかなり危ない。要は小さめの数字をいかに処分するかがポイントになります。
このゲームの醍醐味を感じられたのが、第3ゲーム。「telling,」Oさんが序盤早々、「9」という小さめの数字を出してしまい、ボトルを引き取ることになります。みなが一息ついてラウンドが進むなか、Oさんは「切り札」を駆使して、どんどんトリックを取りにいきます。みるみるうちにボトルの下の数字が小さくなりますが、他プレイヤーの得点を少しでも減らし、次のラウンドにそなえようとの作戦です。ところが、最後のトリックで、「sippo」Iくんがうめきながら出したのが黄色の「3」。最後の最後にボトルを引き取るはめになりました。Oさんは地獄から生還し、大量47点をゲットしました。4ラウンドを終えたゲームの結果は、最初のリードがものを言い、「GLOBE+」Hさんが勝利しました。
ゲームを終えて
トリックテイキングはルールが簡単でも、定跡や勝ち筋を見いだすまでに少々時間がかかります。それだけに遊べば遊ぶほど上達し、ハマる人も多いのです(特に名作と言われるものほど)。ただし注意点を一つ。多くのトリックテイクで採用されている「マストフォロー」は必ず守りましょう。故意はもちろん、チョンボでもゲームそのものを破壊してしまいます。ただし、上級者同士だとカウンティングで簡単にバレるんですけどね。