溢れてこぼれ出てしまった心の声の表現が秀逸!(井上將利)
新年一発目のテーマは「年の差BL」! 年齢差が大きいと社会的な立場も違っているなど様々なハードルが行く手を阻むわけですが、やはり愛の力は偉大……!という具合に燃えるテーマですよ、これは(笑)。
そんな熱量で今回ご紹介するのは「YOUNG BAD EDUCATION」(祥伝社)。本連載2度目の登場となるダヨオさんの作品です!
「おまえを、ずっと見てんだよォ———」。公園で酔いつぶれた担任の高津先生を見つけた水沢(高3)。酩酊状態の先生から、“やめなきゃと思いつつ1年の時からお前のことをずっと見ていた”と突然カミングアウトされると同時にキスされてしまい……。
先生にしてみれば2年越しの秘密を知られた上にキスしちゃったわけですから、やっちまった……‼というトラウマ事案ですよね。翌日、水沢に平謝りしながら忘れてくれと懇願するのですが、水沢は情けなく怯える先生を目の当たりにし意地悪く弄ぶように。
それが作品冒頭の「先生のベロの感触を知ってる」という水沢の言葉と表情に表れていて、最初から作品にグッと引き込まれます。
そして今まで見られていた立場の水沢が先生に興味を抱き始め近づこうとするのですが、一方の先生は2年越しの想いを知られた時点で「もうお終い」という具合に逃げようとするのでした。公園での出来事がきっかけで何かが心の中で始まった水沢と、終わらせた先生。2人の想いが繊細な表現で描かれ、物語は進んでいきます。
水沢が先生を観察し弄ぶなかで興奮するような感触を覚えていき、先生に対する興味がどんどん湧いてくる様子が本当に丁寧に描かれていて「年の離れた男を好きになるってどんな感じだった?」といった言葉にも表れています。溢れてこぼれてしまったような心の声が様々な言葉やセリフで表現されているのが本作の大きな魅力ですね。特に水沢がトイレで先生に詰め寄る場面では、教師としての体裁で逃げる先生の背中に向かって「しね。ろくでなし」と絞り出した水沢のセリフがとても印象的です。いかにも高校生らしい言葉ですが、そこに込められた思いは全く違う感情で、彼が初めて抱いた愛情にも似た苛立ちだったのではないかと感じられます。
また本作における水沢というキャラクター自体が見どころの塊のような存在で、キラッキラの目をした美男子なんですが、どこか普遍的な人間味も醸し出す不思議な存在です。ちなみに、普段は綺麗な顔をしていますが、ニカッと笑って目がなくなってる時の表情も可愛くてとても良いです。そんな彼がだんだんと先生に対する執着心を募らせていく様子からは目が離せないですし、先生のお見合いを向かいのカフェから覗き見して無意識にストロー噛んじゃうあたり、本当にグッときます!(そうです。彼の人間臭さが僕は本当に好きなんです!)
と、最後は少々暴走気味になってしまいましたが、先生と生徒、年も立場も性格も異なるリアルな人間2人が紡いでいく物語を是非皆さんにも読んでいただきたいと思います!
そして2人のその後が描かれた「YOUNG GOOD BOYFRIEND」(祥伝社)も、これまた最高な作品ですので併せて楽しんで頂ければ幸いです!
何気ない一言で動き出す10年越しの恋(キヅイタラ・フダンシー)
ギャップのあるカップリングというと体格差や身分差などいろいろありますが、年の差には特にアンテナが反応しやすいかも、と感じています(笑)。これまで紹介してきた作品にもけっこうそういったものが多かったかもしれませんが、今回は、現在も連載中で続きが楽しみ~♪なタイトルについて書かせていただきます!
にやまさん「僕のおまわりさん」(竹書房)。
本作は「無邪気なわんこと猫かぶり」(竹書房)のスピンオフになりますが、この作品から読んでも問題なく楽しめますのでご安心ください!
警察官の晋(しん)は30歳。身長190㎝もある男前くん。商店を営む誠治は39歳、テキトーな性格もあって未だ独身。恋愛の気配もない誠治が「俺もいっそ男に乗り換えよっかなァ」なんて言ったことで、寡黙な晋が突然動き出しました。
実は晋は10年も誠治に片思いをしていたのです!
2人が知り合った時、晋は学生、誠治は警察官でした。当時荒れていた晋に何かとお節介を焼く誠治に対して、はじめはウザイ大人としか思っていなかったのが、友達や兄弟のように接し続けてくれるうちに、誠治に誇れる大人になろうと晋を変えていったのです。成長した自分を見せようと会いに行った時には、誠治は警察官を辞めていて、晋は会えなくなってから自覚した恋心を10年以上も心の奥に押し込めていました。晴れて警察官になり誠治と再会してからも気持ちを隠し続けていたものの、誠治の何気ない一言がスイッチになっちゃいましたね(笑)。なにせ10年越しの恋ですから!
イイですよね、長年の片思い→再会→恋の予感!
一方の誠治も、まったく予想もしていなかった晋の告白に戸惑いながらも、持ち前のおおらかな性格からか、あまり男同士だからとかは深く考えず、「俺のことを好きな奴を好きになりたい」と、晋のことを受け入れたのでした。良かったね、晋くん~!!
めでたくお付き合いをすることになった2人が、じわじわと関係を育んでいく過程が、高校生の初恋みたいに甘くてとても良いです。晋の静かながらも一途なラブオーラ発しまくりな姿も、誠治の飄々としている素振りを見せながらも、だんだんと絆されて、ちゃんと向き合おうとするところも、キュンキュンしまくりでした。なんだかんだ邪魔が入って、満を持しての初Hも、気持ちが通じているのが伝わってきて、「おめでとう~!」ってなりました。誠治の四十路手前のちょっとぷよぷよした体とかリアルな感じですが、表情も相まって謎の色気が……(笑)。
お話も読みやすくて、周りの登場人物もいい人ばかり(特にお気に入りは誠治の愛猫・チコちゃん。いい味出してます笑)。描写もとても上手で、夏の暑そうな空気感や、町の雰囲気や、どこかにありそうな感じがするくらい。ぜひこういったところも味わっていただきたいと思います!
現在2巻まで発売していて、2巻はさらにラブラブな展開♪ さらに3巻目に向けて連載もされているので、幸せな気分を長~く楽しめますよ!