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「東日本大震災」「震災と死者」書評 現場を重視 記録し考え続ける

評者: 黒沢大陸 / 朝⽇新聞掲載:2021年03月06日
東日本大震災 3.11生と死のはざまで 著者:金田諦應 出版社:春秋社 ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784393495384
発売⽇: 2021/01/27
サイズ: 20cm/322p

崩壊、生と死、再生、そして復興へ…。東日本大震災から10年。被災地支援に活躍した傾聴移動喫茶「カフェ・デ・モンク」のマスターが、大震災のすべてを語る。【「TRC MARC…

震災と死者 東日本大震災・関東大震災・濃尾地震 (筑摩選書) 著者:北原糸子 出版社:筑摩書房 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784480017215
発売⽇: 2021/01/16
サイズ: 19cm/311p

東日本大震災から10年、死者はどう扱われてきたか。災害社会史家が、行政担当者らへの聞き取りなどからその過程を跡づけるとともに、関東大震災、濃尾地震に際し政府や社会が死者に…

東日本大震災 3.11 生と死のはざまで [著]金田諦應/震災と死者 東日本大震災・関東大震災・濃尾地震 [著]北原糸子

 多くの命を奪った震災、その死と向き合う2冊。
 『東日本大震災』は、宗教者が被災地を巡回し、人々の話に耳を傾け続けてきた「傾聴移動喫茶」をめぐる動きがつづられている。
 長い沈黙の末にきっかけを得て泣く母親、「さみしぐね」と意地を張る老女、嵐の日に訪問を待ち続けた人。現場でいつも「覚悟」を問われた。著者は宗教者に言う。「苦しみ悲しみの現場を見ろ。現場から立ち上がる沈黙の言葉を聴け! ここから絶対に離れるな」
 いっとき気持ちが解放されても一生重く残る過去。手探りの活動を続ける営みは、「いつ終わるか分からない『プロセス自体』に意味」を持っている。
 原発事故処理も終わりが見えぬ営み。福島からの問いは、単なる原発の賛否ではなく「私たちの文明のありさまへの問いだったはず」。わずか10年、考え続けるのを忘れてはいまいか。
 『震災と死者』は、自治体の記録誌や仏教系メディア、被災地での聞き取りから、東日本大震災の現実を記録する。緊急対応から復旧へと膨大な業務。予算が10倍になっても「さばける人員がいない」。がれき除去、遺体収容、洗濯して保管された遺体の衣類、仮埋葬。取り組んだ職員は、いまも安置所があった場所に行くと動悸が激しくなるという。思い出したくないが、「伝えておかなければ事実が分からなくなる」。
 聞き取り途中、感情が揺らぎ、中座せざるをえない職員もいた。公式には記されぬことも含め、著者は残す任務に取り組む。「客観的事実を記録化しておくことは重要である。どう解釈され、利用されるのかは後世に託されるべきこと」
 結論は急がない。学者に性急な「成果」が求められる昨今、専任ポストを持たずに在野で研究してきた著者ならではの強みだろう。
 資料が残るから、本書後半の関東大震災や濃尾地震のように後世に資する研究を重ねられる。10年、まだまだ丹念な記録が必要だ。
    ◇
かねた・たいおう 1956年生まれ。曹洞宗・通大寺住職▽きたはら・いとこ 1939年生まれ。災害社会史の研究者。

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