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斜線堂有紀さんが中学時代に友人から贈られたELLEGARDEN「Cuomo」 人生の指針になった力強くてストレートな歌詞

 ELLEGARDENの「Cuomo」といえばWeezerのボーカルであるリヴァース・クオモに捧げられた曲だが、ある一時期、私はこの曲を自分の為の曲だと思っていた。

 というのも、私は中学生の頃にこの歌を贈られたことがあるからだ。

 私にはとにかくセンスの良い友人がいた。友人の知っているものは大抵良いものなので、私は薦められるものを右へ左へと受け取っているだけで、その当時の面白いものや見逃せないものを知ることが出来たほどだ。私が自力で辿り着いた良いものといえば、メフィスト賞と講談社ノベルスぐらいのものだろう。その中で「Cuomo」は友人から貰った素晴らしいものの一つだった。

 作家になろうというような人間は大抵我が強く、中学生というのは大体面倒臭い。というわけで、中学生の斜線堂有紀は我が強い上に面倒な学生だった。今の体たらくを見るに正直信じられないのだが、あの頃の自分は色々なところでリーダーシップを取ろうとするような積極的な性格をしていた。その上でひたすら講談社ノベルスを読み漁るような人間でもあったから、その内面の恐慌具合は推して知るべしだ。とどのつまり、自分は目立つ上に周囲から浮きまくるような人間だった。

 そういうわけで、とにかく落ち着きが無い私とその当時は大人びているように見えた友人は、性格面では全く合いそうにもない人間だった。仲良くなった経緯も、一種の事故のようなものだったくらいだ。振り回してしまうことも多かったように思うし、教師からは直接「よくない影響を与えている」と言われたこともある。まあ、そういう時は私が完全に悪かったのだが……。

 そんな折に、友人が誕生日プレゼントとしてくれたノートの見返しに書き込んでくれたのが「Cuomo」の歌詞だった。洒落たプレゼントだよな、と今でも驚く。あるいは、青臭いのかもしれない。万が一、件の友人がここを読むような事故が起こったら悶絶するような過去かもしれない。けれど、あのノートに書かれた「Cuomo」は中学生の私のみならず、そこから長い間に渡って私を支えてくれたものである。

 力強くてストレートな歌詞は、今思えば自分に重ね合わせるのがおこがましいほど美しい。ただ、その一行一行がかくありたいと思えるようなものだったから、これからの人生の指針になった。諦めず、妥協せず、戦い続ける。

 何より、最も嬉しかったのは最後の「I'm coming along」の部分だった。それを見た時、自分が真の意味で孤独になることはないんじゃないかと思ったのだ。自分が戦い続けている限り、友人はそれを傍で見ていてくれるのかもしれない。たとえどれだけ周りに敵を作ろうと、友人だけは理解者でいてくれるのかもしれない。一分四十九秒の曲を聴いて、そう夢想したのだ。

 それ以来、私は何となく人生が生きやすくなってしまった。どんなことが起ころうと友人は自分の味方でいてくれるだろうし、「Cuomo」は自分の為の歌だと思っていたからだ。

 後者についての勘違いは早々に正されてしまったが、友人は今でも一番の親友として傍にいてくれている。最後の一行は本当だったのだ。

 こういう仕事をしていると辛いことも多々あるのだが、そういう時は今でも「Cuomo」に力を貰っている。まさか友人も、中学生の頃に贈った歌がここまで私の人生に深く根ざしているとは思っていないだろう。もし私が大成したら、是非とも「斜線堂有紀は自分が支えたし育てた」と言ってほしい。何故なら、その言葉に嘘は全く無いからだ。

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