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小児科医・松田道雄が「自分でえらぶ」ことの自由を考える 『松田道雄 子どものものさし』

 あそびの場で、幼児はいちばん本気になる。プールで熱狂してあそんでいる幼児は、本気でいっしょにあそぶ教師は仲間に入れる。でも、「『あなたはもう出ないとはいりすぎですよ』というような教師を、『先生、あっちへいってて』と排除します」。

 そう書くのは、『育児の百科』『私は赤ちゃん』で知られる小児科医・松田道雄(1908~98)だ。科学と文学を横断するひとの文章を集めた「STANDARD BOOKS」の『松田道雄 子どものものさし』に収められている。

 学校や家庭、医学や死などについて書きながら、ずっと考えているのは「自分でえらぶ」ことの意味だ。「子どもだって子どもなりにものさしを心にもっている」「自分のすることに責任をもつためには、自分のものさしではかって、自分で設計せねばならぬ」

 そして、学校にあがるまえの自由な時代を振り返り、「自由のたのしさを体験したことのない人の自由についてのことばを、私は信じたくありません」と、言い切る。思わず頬がゆるむ。(石田祐樹)=朝日新聞2021年4月3日掲載