変化に慣れると最初にどう感じたか忘れがち。100人の作家がコロナ禍でつづった物語とエッセー『Day to Day』(講談社編)からは、1年前の街の雰囲気が濃厚によみがえる。昨年5月から講談社の文芸ウェブサイト「tree」に掲載されたリレー企画で、ほとんどが3~4ページの超短編だ。
辻村深月さんは友達と遊べなくなった男の子のエイプリルフールを、朝井リョウさんは都知事選が迫る中でレジ袋有料化が始まったコンビニでの出来事を、東野圭吾さんは感染症で入院した男性と家族とのやりとりを題材にした。
五木寛之さんは無観客試合や無観客公演に刺激されて「無読者小説」を思いついた作家の物語を寄せている。
ちばてつやさん、安野モヨコさん、山下和美さんら109組の漫画家による『MANGA Day to Day』(講談社編、上下各1540円)も同時に刊行された。
行動が狭められた灰色の時期だが、創作心は世界を自由に駆け巡っていてカラフル。忘れていた記憶が刺激される。(加来由子)=朝日新聞2021年4月17日掲載
