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作品の中でもマスクはいるのか 漫画家が見つめたコロナ

「MANGA Day to Day」(上)の表紙=講談社提供

 新型コロナウイルスの国内での感染拡大が本格化していった1年前の4月からの100日間を、漫画家たちがリレー方式で描いた短編集が出版された。企画には、ちばてつやさんや安野モヨコさんら、ジャンルや世代も異なる109組の漫画家が参加。コロナ禍の日常をそれぞれの視点で記録した。

 漫画家たちが集まったきっかけは、昨年5月から講談社の文芸ウェブサイトで掲載された100人の作家による物語やエッセーのリレー企画だった。同社で「ヤングマガジン」などの漫画雑誌を担当する編集者の鈴木綾一さん(39)は、燃えた。「漫画でも同じことができるはず」

 編集者としての人脈を駆使し、自身のツイッターなどで漫画家たちに寄稿を呼びかけると、109組が名乗りをあげてくれた。

 「2020年4月1日から7月9日までの100日間の日常を、1日ずつ作品で描く」をテーマに、日にちの担当を決めていった。作品はツイッターで6月15日から公開を始めると、時には1万件近い「いいね」が寄せられるなど、大きな反響があった。

 スタートの「4月1日」を担当したのは、ちばてつやさん。4ページの短編「悪魂(あくだま)」では、コロナ禍で一変した社会を憂えながら妖怪「アマビエ」を描いた。翌2日を担当した「島耕作」シリーズの弘兼憲史さんは、作品の登場人物にマスクをさせるべきか悩む自分が主人公。山下和美さんは「7月8日」で、ロックにはまった自身の過去を振り返りながら、ライブに行けないコロナ禍の若者に思いをはせた。「となりの怪物くん」のろびこさんは5月6日を担当。休校中の女子高生が抱える青春の葛藤を描き、お笑い芸人でもある矢部太郎さんは6月29日を担当し、外出自粛後の自身の心境の変化を描いた。

 109組の漫画家たちは、自身の作品のキャラクターにコロナ禍を過ごさせてみたり、自身の暮らしをエッセー風に報告したり、さまざまな手法や作風で連載をつないだ。

 ツイッターでのリレー掲載は、9月22日に終了。「記録として100年先へ残したい」と、作品を集めた短編集「MANGA Day to Day」(講談社編、上下各1540円)が、今年3月、出版された。鈴木さんは「コロナ禍が続き、最近は『慣れ』が見えるようになってきた。この本を読み返せば、あのときの緊張感を思い出せるはず」と話す。

■リレー連載に参加した主な漫画家と代表作(日付は担当した日)

4月1日 ちばてつや(「あしたのジョー」)

4月2日 弘兼憲史(「島耕作」シリーズ)

4月13日 森もり子/トミムラコタ(「ギャルと恐竜」)

5月11日 海野つなみ(「逃げるは恥だが役に立つ」)

5月20日 ひうらさとる(「ホタルノヒカリ」)

5月22日 安野モヨコ(「さくらん」)

6月2日 小川悦司(「中華一番!」)

6月3日 コナリミサト(「凪のお暇」)

7月4日 久米田康治(「さよなら絶望先生」)

7月8日 山下和美(「ランド」)

7月9日 森川ジョージ(「はじめの一歩」)

(御船紗子)朝日新聞デジタル2021年05月06日掲載

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