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若手が支える東北の食は極彩色、「人と食材と東北と」刊行

 東日本大震災後の2013年に高橋博之さんが創刊した「東北食べる通信」は、東北6県の生産者を特集した情報誌を、その生産者が手がけた食材とセットで月1回届けるものだ。同通信に載った記事を抜粋して編集した『人と食材と東北と』が出版された。

 20のストーリーの多くに登場するのが、若い担い手だ。ベテランと共に自然と向き合い模索する姿から、農業や漁業がいかにクリエーティブな仕事かが伝わってくる。福島の桃農家は、完熟で収穫するために一つ一つ注意深く観察。「手の“骨”ではなく、“肉”で握る感覚」で弾力を確かめるという。宮城のカキ漁師は、大きく育てるために養殖いかだを大幅に減らすことを決めたが、長年の経験に基づく勘が科学的にも理にかなっていたというから驚く。

 東北は何色か。長い冬や震災、原発事故のイメージで「灰色」が思い浮かぶような人に、この本を手に取ってほしい。カラー写真を見れば、その風土が「極彩色のカラーバリエーション」をもつことを実感するだろう。(吉川一樹)=朝日新聞2021年6月5日掲載