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光浦靖子さん「50歳になりまして」インタビュー コロナでも、アラフィフでも、それでも留学に行きたい理由

光浦靖子さん

コロナで消えたカナダ留学プラン

――昨年春、コロナ禍で留学を断念し、「私は家なき子の仕事なき子」になったという、光浦さん。妹さん家族の家に2カ月半、居候していたそうですね。そもそも、なぜカナダへ留学しようとしたのですか。アメリカでも、イギリスでもなく。

 お友達がカナダで商売しようとしていて、「案内するよ」って言われてバンクーバーに遊びに行ったんです。その日の夜、ホテルのエレベーター前で、北斗晶さん・佐々木健介さんのご夫婦にばったり会いました。「きゃー! 北斗さーん!」「ええ! 光浦ちゃん?」。息子さんが留学していて、顔を見に来たんですって。

 「あーあ、私も留学したかったな」って言ったら、「留学しちゃいなよ。本気で考えてるなら、よかったらエージェントの人紹介するよ」ってすごく軽く言われて。「コストコじゃないんだから、そんな簡単に行けるわけないでしょ」から始まったんです。北斗さんの一言で、今まで自分のなかで塵(ちり)のように積み重なってきた「行きたい」という願望が、いっぱいになって、「あ、行こうかな」って

――光浦さんは、東京外国語大学インドネシア語科のご出身。学生の時には、留学する友達が周囲にいっぱいいたでしょうね。

 いっぱいいましたよ。もう、皆ね。最終的に言葉を使う商売になっているような人たちは、皆、1回ちゃんと休学して、留学して専攻の言語を学びます。私、大学に(ほとんど)行っていなかったんで。たぶん、挨拶を1個覚えるのに、学費で言うとホント、2万円ぐらいかかった計算になっちゃう(笑)。本当にコスパの悪い感じ。全然、大学に行っていなくて、全然(言葉を)覚えていないの。それもコンプレックス。「学べる時には学んでいない」っていうね。

 私は独身です。旦那も、子供も、彼氏もいません。わかりやすく私を必要としてくれる人が側(そば)にいません。年齢に比例して増えていく休み、そりゃ不安になりますよ。長い夜、思っちゃいますよ。「私は誰にも必要とされていない」と。ネットには「面白くない」「消えろ」「消えた」無責任な言葉が溢れています。私は、顔も名前も出さない奴らの憂さ晴らしのためだけに生きているんだ……。28年やってても頑張り方すらわからない世界です。でも私は、この世界の物差ししか持ってなくて、仕事がない=価値がない、としか思えなくなってしまいました。自分に満足するもしないも、他人からの評価でしか決められない。このままいくと、私はいつか、壊れるな。どうにかしなきゃ。(『50歳になりまして』より)

――留学準備のため、レギュラー番組を減らしていたのですね。

 そうそう。ちょこちょこと調節しながら。「チョロッと、ヌルッと行っちゃえばいいや」と思っていたんです。誰にも相談しませんでした。いや、モノを決めるのに相談したことがないんで。アドバイスは受けますが、「どっちが良い?」って聞いて、相手が「ノン」って言ったとしても、決めるのは自分だから。「どうしたら良い?」って聞かないんですよ。ヒントは勝手にその人の言葉からもらって、それで「イエス」か「ノー」かを決めるから。

――最終的な決断は自分。

 ですもんね。みんなそうだもんね。都合良く「アドバイスだ」って勝手に拾ってくるだけですもんね。いろんな人とかいろんな出来事から。

――留学計画がダメになってしまって、妹さん家族の家に住みながら、「お笑い第七世代」の台頭などで仕事量がやんわり減った光浦さん。その頃考えたことをエッセイにした記事がネットで話題に。光浦さんが現在の立ち位置、考え方に幅広い共感が集まりました。

 ねー。でもね、困っちゃって(笑)。あんなにバズるとは思わなかったから。もう今では、会う人、会う人に「留学、どうなった?」って言われる。だから、行かざるを得ないって言うのが正直なところでございます。

――「留学行く行く詐欺」なんて言われたんですって?

 そうなんですよ。「行く行く詐欺やないか!」って。まー!(笑)。「もー、行くから!」って。

偽名で通った語学学校、でも…

――この1年間、語学学校へも通っているのですよね。

 はい。面白いですね、大人の何か習い事って。被害妄想があったんで、「テレビで出ている、あの人だよ」って注目されるのかなと思ったら、誰ひとり、最初は気づいてもくれない。学びに来る人は横をチラチラ見ないんだよね。横にどんな人生の人がいようが、皆、前しか向いてないから、すごいラク。

――「アキコさん」という偽名で授業に出席しているんですって?

 そうです(笑)。設定は、小さな貿易会社で事務をしているアキコさん。皆、マジメに私のことを「アキコさん」で呼び続けてくれる。「もう、申し訳ないな」って。(授業が進むにつれ光浦さんだと知られて)偽名だってことも知れ渡っているんですよ。皆、わかった上で「アキコさん」って呼んでくれているんです。「なんだこれ?」と思いながら。

――世界が今後どうなるかは誰にもわからないものの、今、7月に留学するべく、再び準備中なのですよね。

 「行けたら良いな」っていう感じで。無事に行けるとは思うんだけどねえ。ビザ取るなど、いろいろ、ちゃんと準備はしているんです。一度キャンセルした語学学校に行く予定です。北斗さんが紹介してくれたエージェントの人が女性で、私と同じ齢かな、今はひとりで会社をバリバリ頑張っている。ご飯もご一緒して、ちょっと半分商売、半分お友達みたいな感じです。日本で引きこもりになった子も留学で引き受けているんですって。留学すると元気になる例が多いそうです。日本でどうしても合わなかった子が海外で合うこともある。

――この1年、オンラインで学ぶという選択肢があることも、全世界の人が知りましたけど。

 知った!

――でも、それでもやっぱり現地に行く決断の理由とは。

 だって、中学生の時から英語を勉強して喋れないんだから、無理でしょう(笑)。家で勉強しても。

――エッセイを読んで私が感銘を受けたのは、コロナによる閉塞感で苦しい時、等身大の人生を、葛藤を抱えつつも切り拓こうとしていく光浦さんの姿勢です。多くの読者も同意見かな、なんて。

 時期が合ったんですね、ちょうど。私は「コロナだから迷った」って言うよりも、コロナになる前からずっと迷っていたんだよね、人生に。「どうしましょう」「この先どうなるんだろう」という不安。

――寿命のことを考えたら、あとまだ50年もある。

 そうなの! あと50年もあるのに、一生懸命「継続は力なり」で頑張ってきたけど、本当に継続だけで生きていけるのかなっていう不安がある。

 心の拠(よ)り所が見つかりました。心の中に西遊記の画が浮かびます。私の三蔵法師と猿と豚とカッパが意気揚々と歩いています。(中略)カナダが私のガンダーラなのだ。(『50歳になりまして』より)

【後編につづく】

光浦靖子さん「好感度ゼロだと思っていた」 50歳を前に振り返る「めちゃイケ!」、初めてつづった相方のこと