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「台北プライベートアイ」書評 垣間見える台湾社会の魅力と闇

評者: 須藤靖 / 朝⽇新聞掲載:2021年07月03日
台北プライベートアイ 著者:舩山 むつみ 出版社:文藝春秋 ジャンル:小説

ISBN: 9784163913674
発売⽇: 2021/05/13
サイズ: 19cm/383p

【台北国際ブックフェア小説部門大賞(2012年)】劇作家兼大学教授の呉誠は鬱々として楽しまず、台北の裏路地に隠遁し私立探偵の看板を掲げるが、猟奇殺人犯の濡れ衣を着せられ……

「台北プライベートアイ」 [著]紀蔚然

 劇作家で大学教授だった呉誠(ウー・チェン)は、妻に捨てられ鬱々(うつうつ)とした精神状態のまま50歳を前にして台北の路地裏に隠棲(いんせい)。生まれてこの方一度も暴力を振るったことがなく理屈っぽい性格(大学教授にありがちかも)にもかかわらず、なぜか突然私立探偵を開業する。
 初めての依頼者は、夫の秘密を突き止めたい美しき人妻。夫の謎の行動を見事に解明した矢先、近所で次々と起こる残酷な連続殺人事件の容疑者として拘禁されてしまう呉誠。その人妻、派出所警官、自動車修理工場のおやじ、タクシー運転手など、個性豊かで愛すべき友人たちに助けられつつ真犯人を探す羽目に。
 へそ曲がりのインテリ丸出しの呉誠の屈折した世界観を通じて、台湾社会の魅力と闇を垣間見ることができるのもまた楽しい。
 言われなければ翻訳とは気づかないほど秀逸な日本語訳だ。おかげでハードボイルドとは対極の病的な探偵が活躍する台湾発ハードボイルドを堪能できた。