絵本ナビ編集長おすすめの新刊絵本11冊は…? 「NEXTプラチナブック」(2025年11月選定)
【この記事で紹介する絵本】
朝いちばん。大きな声を出してどきどきしてるのは、にわとり。もうすぐチョウになりそうなさなぎ。一生懸命はしっている犬に、けんかしているねこ。大きく羽を広げたくじゃくに、海で泳ぐいわしも。みんな、どきどきしてる。力強い版画と素朴な言葉でつむぐ、やさしくて、まっすぐな、生きもの讃歌。
【編集長のおすすめポイント】
どきどきするのって、どんな時? 例えば、誰かに話しかける時、知らない場所に立っている時。そんな緊張と不安が混ざったような「どきどき」。あるいは、今にも走り出しそうなくらいに嬉しい時、けんかをしている時。興奮の「どきどき」もあるよね。美しいものを見ている時や、さみしくてたまらない時だって静かに「どきどき」する。ああそっか。どきどきするって、今の私が生きているってことなんだ! 明日はどんな「どきどき」が待っているのかな……。
今日は待ちに待った音楽会の日です。くまおさんもはりきって準備をします。あらあら、くまおさん。それはトランペットではありませんよ~。 会場に着いて、くまおさんが楽器の箱をあけると、あらびっくり。入っていたのは……? 注目の絵本作家へんみあやかさんが描きだす脱力系ユーモア絵本。
【編集長のおすすめポイント】
トランペットと間違えて持ってきてしまったもの。バイオリンやたいこと間違えて持ってきてしまったもの。それからそれから……。さあ、想像してみてください。それらはいったいどんな音をならすのでしょう。そして、その音で演奏したのは、いったいどんな音楽だったのでしょう。愉快なオノマトペを声に出して読みながら、自分なりの「おかしな音楽会」を演出してみてくださいね。ああ、うっかりが生みだすそれぞれの音楽会。聴いてみたいなあ……。
すぐに「ごめん」と言えなくて、ハルに手紙を書いたけれど、そうたが書いた「ごめん。」が逃げ出した!いったい何が起こっている!? ここかしこであらゆる「ごめん」がいなくなり、商店街は大混乱。果たしてそうたは、自分の「ごめん。」を取り戻し、ハルに「ごめん。」を伝えることができるのか?
【編集長のおすすめポイント】
きっかけは、すんなり口から出せなかった「ごめん。」。その気持ちはよくわかる。だけどぐずぐずしていたら、「ごめん。」の方だって、いつまでも大人しく待ってくれているとは限らないのだ。「あっ!」と気づいた時には、私の「ごめん」だって、そうたの「ごめん。」みたいに逃げ出してしまうかもしれないのだ。だからこそ、心の中に「ごめん」の気持ちがあるうちになんとか相手に伝えなければ……。逃げるな「おれ」、がんばれ「ごめん」。皆さんも、どこかで「ごめん」を見かけたら、そっと応援してあげてくださいね。
「おとうさん、わたしが まっていたら びっくりするだろうな。」バス停までお父さんをお迎えにきたばる。バスは次々にやってきますが、お父さんはなかなか姿をあらわしません……。日常のほんの短い時間の中で、大きく揺れ動く幼い子どもの心情を丁寧に描きだした、愛らしく心あたたまる絵本です。
【編集長のおすすめポイント】
お父さんにとって、バスに乗って帰宅する時間というのは、毎日の習慣のひとつかもしれません。だけど、ばるにとっては違います。「バス停でお父さんを驚かせたい」「ちょっとでも早くお父さんに会いたい!」「ひとりでもできるもん」……色々な気持ちが詰まった「特別な時間」なのです。それがどんなに長い時間だったのか、大人の私たちにも想像がつきますよね。子ども時代に味わった様々な感情が蘇ってくるようです。きっと、ばるにとっては忘れられない大切な時間となったことでしょう。誰かを待つ時間って、なんだかとても奥深いものなのかもしれません。
夜の終わり。美しく輝くまんまるお月さまが、森の中に静かに着陸。中から出てきたのは……!? どうやら月が空にのぼるのは、彼らの仕事のおかげらしい。注目の絵本作家ふくながじゅんぺいさんによる、不思議で愉快なお月さま絵本。
【編集長のおすすめポイント】
「月ってなんだろう?」「どうやって動いているの?」「誰かが乗ってるの?」……そんな空想から生まれてきたというこの物語。実際に絵本を読んでいると、まるで昔から世界はそうだったような気もするし、いやいやこれが最先端なんだという感覚にもなってくる(だったら大変だけど)。そう思わせてくれるのは、この設定にしっくりぴったりきている背景の絵と、そこで暮らしているうさぎたちがあまりに楽しそうだから、かもしれません。「月とうさぎ」という普遍的なテーマも、誰もが勝手に想像をふくらませていってしまうのでしょうね。
赤や黄色に染まり輝く秋の山で、木の実や果物をもくもくと食べ続けているのは、ひぐま。沢山食べておかなくてはならない理由があるのです。やがて雪がふり、森がすっかり銀色の世界になった頃。どこからか聞こえてくるのは、ひぐまの赤ちゃんの声。雪の下の巣穴の中でお母さんに大切に育てられ、やがて……。旭山動物園の飼育係として25年間働いた経験を持つ絵本作家・あべ弘士さんが描く、野生のひぐま親子の物語。
【編集長のおすすめポイント】
大きなひぐまのお母さんから生まれるのは、小さな小さな赤ちゃん。外の世界とつながっているのは聞こえてくる音だけ。暗い巣穴の中で大切に育てられ、ぐんぐん成長していきます。そんなこぐま達が初めて光の中の春の景色を目にした時、どんな感動を味わったのでしょうか。例えば……晴れ渡った空、色鮮やかに咲く草花、お話の中でしか知らなかったキツツキやきつね。自分に置きかえてみると、想像するだけでもワクワクしてきますよね。絵本だからこそ味わえる「生きる喜び」「命の尊さ」。そのまぶしい景色を親子で味わってくださいね。
丘の上の木のじいさんのところに、行き場をなくした一羽のとりがやってきた。ところが、夜になると誰かがべそべそ泣いている。そこにいたのは、朝から晩まで泣いてばかりいるべそべそむし。とりが怒ると、べそべそむしは逃げだしてしまい……。
【編集長のおすすめポイント】
「気持ち良く暮らしたいだけなの」と言うとりの気持ちはよくわかる。でも、木のじいさんも「べそべそむしとわしも、ずうっと気持ち良く暮らしておったんだがなあ」と言う。とりにとっての「おとなりさん」は木とべそべそむし。でも木とべそべそむしにとっては、とりが「おとなりさん」。みんな違うのはあたりまえ。けれど、どうやったらみんなが気持ち良く暮らしていけるのか……。これは今を生きる誰もが感じている課題なのかもしれませんよね。
60年前、それまで女性が走ったことのないボストンマラソンに、たったひとりで挑戦した女子ランナーボビー・ギブ。彼女は小さい頃から走ることが大好きだった。けれど当時「女性にはスポーツは向いていない」と言われていた時代。あきらめきれなかったボビーは……。1966年、アメリカのボストンマラソンで繰り広げられた「世界を変えた挑戦」を描きだした絵本。
【編集長のおすすめポイント】
驚くべきことに、オリンピックで女子マラソンがはじまったのは1984年のロサンゼルス大会から。ボビー・ギブの挑戦から、実に18年後のことだったのです。世界を変えていくのは、それだけ大変なことなのかもしれません。それでも原動力となったのは、「わたしもいっしょに走りたい!」というボビーの純粋な憧れの気持ちから。その願いを叶えるために、目の前に立ちはだかるルールの壁をこえ、ひたすらに走り続けるボビー。その姿は、当時の人々の考えを変えていくだけでなく、今を生きる私たちにも心に響くものがあるのです。
もしもウマだったら、一日中走りまわっちゃうし、妹を背中に乗せてあげたいな。水泳大会では、きっと大活躍! どろんこの中を転げまわっても、おふろになんか入らないし、服だって着ない……。コールデコット賞を二度受賞しているソフィー・ブラッコールによる、純粋な子どもの夢を、画面いっぱいダイナミックに描ききった絵本。その夢の背景にあるものを読み取った時に、ハッと胸を突かれるのです。
【編集長のおすすめポイント】
今、自分が好きなものになれるとしたら、なにになりたいだろう。ウマもいいな、でもイルカもいいよね。トリだっていいし、ネコにだってなってみたい。もし、なりたいものになれたとしたら、なにがしたいだろうか。誰に見せてあげたい? どこに行く? どんどん想像が広がっていったら、その様子を絵に描いてみるのもいいし、文章にしてみてもいいよね。そして、それを大切な人に見せてあげてもいいし、自分の中で大事にしまっておくのもいい。そうやって続きの想像をどんどん育てていけたら、きっといつか……。絵本の中の素敵なウマを見ながら、そんなことを思うのです。
レディ・ラビットのマジックショーへようこそ! この絵本は、ふつうの絵本ではありません。マジックをあなたに見せる本です。質問に答えて、指示通りのページに進むと……? レオナルド・ダ・ヴィンチも魅了されたマジックのタネを下敷きにした、読者参加型の楽しい絵本。
【編集長のおすすめポイント】
2つの質問をされただけで、自分の心を完全に読まれてしまうこの手品。確かにどこかで出会ったような気もするけれど、やっぱり毎回驚いてしまうのだ。ましてや、いつのまにか自分が主人公になった気分にさせてくれるのだから、面白いのは当然!? そして、その面白さは子どもにも大人にも平等。だからこそ、次は自分の番。油断している大人の心を、思いっきり読んじゃってくださいね!
今日もあの子たちはどこかへ行っちゃった。そしてフランクはひとりぼっち。ティッティとパッレとミーランはあんなに楽しそう。フランクはひとりぼっちだというのに。毎日がこんなことのくりかえしなんだ。でも、今日はちょっとちがった。アストリッド・リンドグレーン記念文学賞受賞作家のエーヴァ・リンドストロムがフランクが感じる「孤立」をユーモアたっぷりに表現。
【編集長のおすすめポイント】
孤独の悲しみから流れでる涙。フランクはその涙を無駄にはしません。時間をかけて煮込んで、甘味をたっぷり加え、こんがり焼いたトーストにぴったりなマーマレードを作りだしてしまうのです。その様子からは、フランクの並々ならぬこだわりが見えてきますし、なんだか結構楽しそう。フランクにとって孤独の感情は悲しいだけではないのかもしれませんよね。大切にガラスびんにしまわれたマーマレードを見ながら、そんなことを思うのです。
絵本ナビ編集長がおすすめする「NEXTプラチナブック11選」はいかがでしたでしょうか。対象年齢も、あつかっているテーマもさまざま。気になった絵本があったら、ぜひ手にとってみてくださいね。絵本ナビ「プラチナブック」連載ページへ