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進化をたどる「サバイバルする皮膚」など注目の新書5選

「サバイバルする皮膚」

 皮膚研究30年の著者が、7億年前から今に至る皮膚の進化をたどる。「自己と世界の境界にある」人間の皮膚は様々なものを感知し、その情報を処理して脳に送っている可能性があるという。話は言語や意識と皮膚との関わりにも及ぶ。例え話がわかりやすく、専門知識なしでも困らない。
★傳田(でんだ)光洋著 河出新書・946円

「女たちのポリティクス」

 英国在住の著者が、世界の女性政治家の最近の動向を論評した連載をまとめた。欧州で右翼ポピュリスト勢力を率いる女性が増えている情勢から、ナショナリストがフェミニズムを利用する「フェモナショナリズム」を解説。日本に登場する素地がないかの視点は示唆に富む。
★ブレイディみかこ著 幻冬舎新書・990円

「東南アジア史10講」

 ASEAN10カ国と東ティモールを一つのまとまりとして捉えた通史。中国やインドなど、外部の大市場が栄えると「海」の交易国家が発展、大市場が滞ると「陸」の農業国家が台頭する。そう繰り返す歴史を古代から交易の時代、欧米の植民地支配、第2次大戦と独立、コロナ禍まで見通しよく描く。
★古田元夫著 岩波新書・990円

「リニア新幹線と南海トラフ巨大地震」

 JR東海が開業をめざすも、静岡工区での着工のめどが立たないリニア中央新幹線。何本もの活断層を横切ることに加え、南海トラフ地震が起きる恐れがあり、「建設を中止すべきである」と地震学者は訴える。コロナ後の日本社会では、リニアは「時代錯誤」だとも。
★石橋克彦著 集英社新書・924円

「ジェンダーで見るヒットドラマ」

 ジェンダー問題に詳しいジャーナリストが、日本や韓国、アメリカ、欧州のドラマを見比べ、ジェンダー観の違いや#MeToo運動がもたらした影響を読み解く。大ヒットした「半沢直樹」と「私の家政夫ナギサさん」からは、日本が抱える課題も見えてくる。
★治部れんげ著 光文社新書・1034円=朝日新聞2021年7月3日掲載