『働くことの人類学【活字版】 仕事と自由をめぐる8つの対話』(黒鳥社・2200円)は、文化人類学者の松村圭一郎氏が他の研究者と語り合い、世界の狩猟採集民や牧畜民の働き方と人生観から「働くとは何か」を考える本だ。制作は黒鳥社と文房具・オフィス家具メーカーのコクヨのシンクタンクが共同で運営する「コクヨ野外学習センター」。もとはインターネットで音声を配信するポッドキャストの番組で、1回目で黒鳥社の若林恵さんが手応えを感じ、書籍化を決めた。
賃労働を始めても狩猟をやめなかった民族の話などが、一つの仕事を極めるべきだという日本人の思い込みを揺さぶる。番組の目的は、企業からの発信ではなく、得られた知見を企業活動に生かすことという。若林さんは「今の企業は社会で起きていることや顧客の求めるものが分かっていない。やるべきは発信ではなく人の話を聞くこと」と話す。(川村貴大)=朝日新聞2021年7月17日掲載