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ひらりささん「沼で溺れてみたけれど」インタビュー もがいて悩む、彼女も私も

ひらりささん=門間新弥撮影

 フィクションの登場人物や、「推し」の対象に特別な感情を抱いて没入することを、「沼にハマる」と呼ぶ。ある世界に足を踏み入れたばかりに大金を失ったり修羅場に巻き込まれたり、「人生の沼」に溺れた女性たちに話を聞いてまとめた。

 もとはウェブ媒体での連載。就活や仕事、結婚・出産など「女性の人生における節目を『お金の悩み』という視点から聞くと面白いんじゃないか」。不倫相手と暮らすため新築のタワーマンションを5700万円で買った女性の話は、100万ページビューを超える反響を集めた。

 ママ活や留学、スピリチュアルなどの沼が登場する中で、関心は次第にお金から人生へと移った。「様々な女性たちの人生の話ですが、自分自身の悩みの変遷も盛り込まれています」。女性たちの語りの前後に、自らの体験や感想を置くスタイル。最後の章では、自身が溺れた投資トラブルについてつづった。

 「物心つく前からのオタク」を自認する。はまったジャンルはマンガ・アニメ、韓流、コスメ、占い……。取材した女性14人の多くは、オタク趣味などを通じてツイッターで出会った人たちだ。表の人間関係では言いづらい話も、「悩んでいる人に通じれば」と匿名で打ち明けてくれた。連載が進むと、フォロワーから「お話をさせてもらえないでしょうか」とメッセージが来た。

 ウェブ編集者を経て、会社員をしながら副業で執筆してきた。ステレオタイプに回収されがちな女性たちの生き方を、一つずつ個別化していくことに関心がある。「肩書をつけるなら『女についてずっと悩んでいる人』でしょうか」
 通読すると、沼でもがく一人ひとりの人生に、「普通」や「不幸」といった言葉ではくくれない切実さや尊さがあることに改めて気付く。(文・大野択生 写真・門間新弥)=2021年7月24日掲載