1. HOME
  2. コラム
  3. 気になる雑誌を読んでみた
  4. 雑誌「Jレスキュー」 惚れてしまう、人命救助一直線

雑誌「Jレスキュー」 惚れてしまう、人命救助一直線

Jレスキュー

 表紙を見た瞬間、かっこいい! と思わず唸(うな)った。毎号消防士の写真が載っているのだが、モデルを使っているのかと思いきや、実在の消防士やレスキュー隊員なのだ。そのあふれ出る貫禄と厳しくも優しい眼差(まなざ)しは、イケメンなんて言葉が薄っぺらく思えるほどのかっこよさ。大勢のなかから選(え)りすぐりの人材を載せているというより、誌面を見てみれば、出てくる人がみな男前なのである。

 記事も熱い。最新の11月号の特集は「次世代自動車の普及を見すえた これからの交通救助テクニック」と題し、スライドドアの外し方などの実践テクニックから、次世代車両(HEV、EV、FCV)の特性と注意点などが豊富な写真とともに紹介されている。私は現場を見たこともない門外漢だが、これは相当役立つ内容に思えた。

 他にも「災害対応のプロフェッショナルが教えるワンポイント講座」「水難救助ダイビング講座」「ドローンで変わる消防活動」などなど、どこにもまどろっこしい記事はなく、日々変化を続ける事故や災害に対応していくための事例研究や技術解説が矢継ぎ早にくりだされる。「そうか! そうすればいいんだ!」という小さな連載記事でも、道路交通法で乗車定員が定められている消防車両が、津波や火山災害で逃げ遅れた住民等を定員を超えて乗車させることの法的解釈の問題などを取り上げていて、隅から隅まで人命救助一直線。読むほどにありがたさで胸が熱くなってくる。

 知らなかったのだが、消防やレスキューの現場では、地域の消防本部ごとに、消防車両や機材、防火服や個人装備、訓練法に至るまで、あらゆる分野で独自に改良、改善が行われているらしい。ちょっとした創意工夫が命運を分けることも多いからだろうか。本誌はそうした知識の共有の場にもなっているようだ。

 とくに驚いたのは消防車。どこも同じなのかと思いきや、地域の特性に合わせて開発され、いい意味での細分化が進んでいる。「全国新車速報」でそれらが細かく紹介してあり、知られざるディープな世界がそこにあることを知った。消防車だけで一冊の図鑑ができそうなほどである。

 とにかく雑誌全体を通して目につくのは、消防やレスキューの人たちの日々新しい技術に挑んでいる姿だ。あらゆる知識を吸収し、総力を結集して命を救おうという思いがあふれて、うう、なんか涙が……。
 いや、ほんと、こんなかっこいい雑誌ははじめてだ。惚(ほ)れた。=朝日新聞2021年12月1日掲載