「イップス」
野球の送球やゴルフのパットなどがうまくできなくなる運動障害はイップスと呼ばれる。メンタルが原因と言われ、選手生命を絶たれる人も多かった。イップスを乗り越えたプロ野球選手やプロゴルファーらに実体験を取材。医学の知見を踏まえ脳に原因があると指摘し、「魔病」克服への道筋を示す。
★澤宮優著 角川新書・1056円
「文学部の逆襲」
大学改革の本ではない。資本主義と民主主義を刷新し、社会を再構築する「大きな物語」が必要と人文知の結集を求める。経済、政治、歴史、テクノロジーと思想など広大な領域で来し方と問題点を総覧し、「資本の強大化と経済合理性という一元的価値観」を排して人文の価値と意義を説く。
★波頭亮著 ちくま新書・858円
「うんち学入門」
動物は食べ物から得たエネルギーを使って生命活動を行い、その結果排泄(はい・せつ)する。つまり「うんち」を考えることは「生きること」を考えることと著者は説く。冬眠中のクマは便を出すのか、人間だけがトイレットペーパーで拭くのはなぜ?など、生命の進化や活動から謎を解き明かす。
★増田隆一著 講談社ブルーバックス・1100円
「どろどろの聖書」
聖書研究をライフワークとし、昨年カトリックの洗礼を受けクリスチャンになったという著者。兄弟間のいさかいや、腹違いの妹への禁断の恋など愛憎劇の宝庫である聖書は、有名人のゴシップのように楽しめると読者に約束し、旧約・新約から厳選した51のエピソードを紹介する。
★清涼院流水著 朝日新書・869円
「平成のヒット曲」
美空ひばり「川の流れのように」、宇多田ヒカル「First Love」、米津玄師「Lemon」――。曲名を聞けば、「あの頃」を思い出す人も多いはず。各年を象徴する曲はどのように作られ、社会に何をもたらしたのか。平成を三つの期間に分けて30曲を分析し、時代の実像に迫る。
★柴那典著 新潮新書・946円=朝日新聞2021年12月4日掲載