製本、帯、タイトルのサイズと書体。すべてに作家のこだわりが感じられる美しい装丁は、作品が持つ独特の雰囲気を捉えている。
二〇一四年にラトビアの写真ワークショップで知り合った山元彩香さんは、当時すでにこのシリーズを何年も撮り続けていた。異国で、子どもと大人のあわいにある少女をモデルに、現地で調達した古着を纏(まと)わせ、生みだされる青い色調の写真は当初、主に東ヨーロッパやロシアで撮影されていた。非常に美しい写真だが、なぜいつも白人の少女なのかなど、どう解釈すればいいか考え込まされる側面もあった。しかしその後、二〇一九年にはマラウイへ赴き、パンデミック後は沖縄で本シリーズを撮影し続けている。それらの新作が収録された本書で、わたしの問いも変化しはじめた。奥行きが生まれ、豊かになった作家の世界観がここに見渡せる。
あとがきでは、山元さん自身と被写体が鏡に例えられ、その関係性は「映し合う」存在だと説明される。映し合ったものが何なのか、これからもゆっくり見ていきたい。=朝日新聞2021年12月18日掲載