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「草のふえをならしたら」ほか子どもにオススメの3冊 楽しいことが起こる音色

「草のふえをならしたら」

 まこちゃんがブイブイッとネギのふえを鳴らしたら、ブタがひょっこり顔を出す。ともくんが笹(ささ)の葉をビブーッと鳴らすと、タヌキがおしょうゆの注文をとりにくる。すみれ組の子どもたちは桜の花びらでぴーっぴーっ、たえちゃんはカラスノエンドウのさやでプピッ、あっちゃんはドングリのふえをほーっ……野原や森でつんだ草や実や葉っぱを鳴らすと何かが起こって、子どもたちはウサギやキツネやアオバズクやカエルたちと不思議な世界に入り込む。

 草笛をじょうずに鳴らすには練習も必要。自然とうまく付き合うのも同じ。でも、こんなに楽しいことが起こるならやってみたいな、と思わせてくれる八つのお話に、ゆかいな絵もいっぱい入っているよ。(林原玉枝作、竹上妙画、福音館書店、1760円、小学校低学年から)【翻訳家・さくまゆみこさん】

「なきむしせいとく」

 舞台は1945年の沖縄。父に続き中学生の兄も兵隊になり、ぼく=せいとくは母と妹と3人で南へ逃げていく。国民学校2年生の泣き虫なぼくの視点で、住民を巻き込んだ凄惨(せいさん)な沖縄戦を描いた絵本。豊かな自然も地獄の戦場も、みごとに染めつけた型絵染。部分的に激しい筆致で重ねた絵の具から情念がほとばしり、臨場感に震える。10年後の占領下、本土復帰前のぼくの希望を込めた言葉で絵本は締めくくられるが、現実は? 沖縄に40年以上通い続けた作者がたどり着いた表現は、読者に知ること、想像することを促す。(たじまゆきひこ作、童心社、1760円、小学校中学年から)【絵本評論家・作家 広松由希子さん】

「東京タワーに住む少年」

 東京タワーに虹をかけるという夢を実現するために、プラズマ理論の研究に熱中する小学6年の健人。タワー内に秘密の研究室を持つ祖父と完成をめざすが、うまくいかない。それまでの健人は仲間と協力して何かやるというより、自分ひとりでやることが多かったが、研究に行きづまり他の人に協力を仰ぐことも大切だと気づいていく。大学生の光平ら、新たな仲間も加わる。彼らは人々の心に希望を与えてくれる虹をつくることはできるのか。心に希望の灯をともす物語。(山口理作、ふすい絵、国土社、1540円、小学校高学年から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】=朝日新聞2022年5月28日掲載