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なかざわくみこさんの絵本「なぞなぞのみせ」 なぞなぞを解きながら商店街をひとめぐり

文:坂田未希子

9店の商品の中に答えが

――「さいしょは まっしろ やがて だんだん くろくなる さて いったい なあに?」。文房具屋さん、時計屋さん、八百屋さん……お店に並んだ商品の中からなぞなぞの答えを探す『なぞなぞのみせ』(なぞなぞ・石津ちひろ/偕成社)。お店にこまごまと並んだ品物を見ていると、一緒に買い物をしている気分にもなれる作品だ。絵を担当した、なかざわくみこさんは、本作がデビュー作。そのきっかけとなったのは、商店街の絵だった。

 絵を描くことと絵本が好きで、何かにつながるといいなと思って、雑誌「月刊MOE」に作品を応募していました。月間賞をいただいた作品(後にグランプリ受賞)を偕成社の編集者・梅田純子さんが見てくれて、声をかけていただきました。作品は「マツエさん」というタイトルの4枚組の絵で、祖母を描いたもの。家族で東京・柴又の帝釈天に出かけたことがあって、祖母が門前参道商店街でお店を見ながら歩いている風景を写実的に描きました。店先に品物がたくさん並んでいて、その雰囲気が絵本の企画にぴったりだったようです。絵本の仕事は初めてで右も左も分からない状況でしたが、企画も面白かったので「ぜひやらせてください!」という感じでした。

――絵本の舞台となるのは商店街。女の子とおばあちゃんが買い物をしながら9つのお店をまわっていく。モデルになったのは、なかざわさんが住む千葉県の八街駅前の商店街だ。

 最初に八街の商店街を見ながら、自分に描けそうなお店をいくつか選んで、そこから面白くなりそうなお店を梅田さんと相談して決めました。その後、お店の商品でなぞなぞの問題にできそうなもののリストをもらって、そのリストにあるものを含めてなるべくいろいろなものを描き込みました。最後に、完成した絵を見ながら、石津さんがなぞなぞを作るという流れでした。先に絵を描かせていただけて、しかもすごく時間をかけてゆっくりやらせてもらえたので、のびのび描くことができてとても楽しかったです。

――店内は商品が並んでいるだけでなく、段ボール箱が積まれていたり、カレンダーが貼ってあったり、細部がリアルに表現されている。一方で、カメやヤモリなど、実際にいないものが描かれているのも面白い。

 お店は実際に写真を撮って、それを参考に描きました。棚に並んでいる、そのままの部分もあります。薬局の薬のパッケージを描くのは細かくて大変でした。花屋の花とか八百屋の野菜や果物とか、自然の色や形を描くのはリラックス効果があるのか、とても楽しかったです。

なかざわさんが資料として撮影した写真と、『なぞなぞのみせ』の絵

 カメとかヤモリは、私がなんとなく居てほしいなという生き物とか、ここにこんなものがあったら楽しいんじゃないかなとか、思いつきで描いたものです。なぞなぞの問題になっているものもあって、思いつきの絵が重要な役割になって驚きました(笑)。作品を描いていたのは10年以上前。今も商店街はありますが、時計屋さんと、ケーキ屋さん、本屋さんがなくなってしまいました。本屋さんは、絵本が出たときにたくさん置いて応援してくれていたので、とても寂しいですね。

なぜか心が躍る商店街

――散歩が好きで、商店街を見て回るのも大好きだというなかざわさん。

 商店街はなぜか心が躍るような、惹かれるものがあります。見ているだけでも怒られないし、お店の人と話すのも好きです。誰でも溶け込める雰囲気もいいですね。ごちゃごちゃしている景色とか、商品がいっぱい並んでいるのも面白くて。お店の人によって品物の並べ方も違って、その人を感じられるようなところも好きです。八百屋さんは必ず見ちゃいます。大人になってから聞いたのですが、ひいお爺さんが(東京の)千住あたりで八百屋をやっていたらしくて、それも惹かれる理由なのかもしれません。

 子どもの頃は、近所に古い食料品店があって、お使いやお菓子を買いに行っていました。ガラガラっと引き戸を開けると土間があって、奥からおばあさんが出てくる。ちょっとこわい感じの人で、その人と交流しなくちゃいけないんですけど、お菓子欲しさに通っていました。おばあさんに「あんた」って言われたことがあって、「あんた」って言われるのが初めてで、すごいショックを受けた覚えがあります(笑)。お店の思い出はいろいろありますね。

――どこか懐かしいような雰囲気がある、なかざわさんの絵。割り箸の先を削り、墨で線を描いた後、水彩絵の具で着色していて、線のかすれ具合にも味わいがある。

 割り箸で描くのは、小学校の図工でやったのが好きだったのを思い出して、大学卒業後、作品を応募するようになったときに始めました。この描き方だからか、絵の雰囲気が「昭和っぽい」って言われることがあります。自分ではリアルな現代を描いてるつもりなんですけど(笑)。声をかけていただいたのは、応募をはじめて3年くらい経った頃。それまで、このまま続けて大丈夫だろうかと思うこともありましたが、自分が描きたいものを描いていこうと、好きな写実を始めたら、誌面に載るようになって自信がつきました。自分のやるべきことをやればいいんだって。変に焦ったりすることはなかったですね。やれることをやろうって。

なかざわくみこさん

 作品を描くときも、自分が楽しめて、納得できるものが描けたらいいなと思っています。自分のやりたいことが通らないこともありますが、なるべく、自分がわくわくできるように、心が躍るようにもっていきたい。それが読んだ人に感じてもらえるとうれしいです。

 これからは、ファンタジーなんだけど本当にありそうな世界を描いてみたいです。子どもの頃、『めっきらもっきら どおん どん』(作:長谷川摂子、画:ふりやなな/福音館書店)が大好きでした。この世とあの世をつなぐような怪しい雰囲気とか、縄跳びでびゅんびゅん飛ぶところで風を感じられたりして、すごく引き込まれた作品です。そういう入り込めて、帰ってこられるような世界を描きたいなと思っています。