1. HOME
  2. ニュース
  3. 芥川賞・直木賞、贈呈式 小説への感謝を語る

芥川賞・直木賞、贈呈式 小説への感謝を語る

窪美澄さん(左)と高瀬隼子さん

 第167回芥川賞・直木賞の贈呈式が26日、東京都内で開かれ、受賞者2人が小説への感謝や抱負を語った。

高瀬さん、読んでくれた人の存在が救いに

 芥川賞を受賞した高瀬隼子(じゅんこ)さんの『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)は、職場の人間関係をつぶさに描写する。選考委員の松浦寿輝さんは「重苦しい主題を、非常に軽やかな手つきでユーモアにくるみながら描いている。繊細な心理小説の傑作だ」と評した。高瀬さんは「私は小説を読むことで救われてきた。いま眠れない夜に、私の小説を読んでくれた人がこの世界に存在するのだと考えることは、新しく私を救ってくれるようになった」と喜びを語った。

窪さん、貝殻ひろうように書き続ける

 直木賞を受賞した窪美澄さんの『夜に星を放つ』(文芸春秋)は、喪失感を抱いて生きる人たちを描いた短編集。選考委員の浅田次郎さんは「人の小説をあまり褒めない私が素晴らしいとまで言い切る、短編のお手本。違った苦労を別々のストーリーにのせて描き分けており、満天の星を見るような感動を覚えた」とたたえた。窪さんは「大好きな詩人、長田弘さんの詩に『貝殻をひろうように、身をかがめて言葉をひろえ』という一節がある。そういう気持ちでこれからも小説を書き続けたい」と述べた。(田中瞳子)=朝日新聞2022年8月31日掲載