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絵本ナビ編集長おすすめの新刊絵本12冊は…? 「NEXTプラチナブック」(2022年8月選定)

【この記事で紹介する絵本】

凝縮した時間の中で繰り広げられるのは? 『がっこうに まにあわない』

『がっこうに まにあわない』(作:ザ・キャビンカンパニー/あかね書房)

7時47分。ぼくは玄関をとびだし、ゴウゴウと走り出す。このままだと学校に間に合わない。今日は遅れちゃいけない訳がある。ランドセルを背負い、帽子をかぶり、必死な形相で地面を蹴りあげ、いつもの道をまっすぐ駆けていく男の子。ところがなんだか変だ。何かが変だ。51分、52分、53分……あせればあせるほど、景色が、時空が、ゆがんでいく。だけど今のぼくはそれどころじゃないんだ!

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編集長のおすすめポイント

どこまでも濃い数分間。まるで悪夢のようだと思いながら、でも解放された時に味わうのは、不思議なくらいゆっくりまったりと流れる夢のような時間。そして空を見上げれば、そこに輝いているのは、もう二度とその場所で目にすることはできない、あの美しい現象。なんてドラマティックな出来事なのでしょう。当たり前のように淡々と流れる時間の中で過ごしていると、気づくことはなかったかもしれない不思議な現象。けれどこの絵本を読んでいると、いつか経験したことがあるような気もしてくるのです。

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似ているようで、どこか違う? さかなくんの世界『さかなくん』

『さかなくん』(作:しおたにまみこ/偕成社)

さかなくんは、小学生。今日も学校へ行きます。ゴムのずぼんをはき、ガラスのヘルメットをかぶり、ひれにクリームをぬったら、最後にゴムのくつをはいて準備はおしまい。これでやっと学校へ行くことができます。さかなくんは、だいたい学校が好きです。でも、ひとつだつだけきらいなことがあります。体育が大きらいなのです。だって……。

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編集長のおすすめポイント

さかなくんの仕草や表情、そして学校や家の中の隅々まで。どんなに驚きの設定だったとしても、リアルな描写があるからこそ、子どもたちは自然とこの世界に夢中になってしまうのでしょうね。さらにヘルメットの上にちょこんと乗った黄色い帽子や、お昼ごはんの水草を食べる様子、にんげんくんと呼ばれている子……そこかしこに散りばめられている作者の繊細なユーモア感覚。見つけるたびに嬉しくなって、笑いがもれてしまうのです。

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ほんやがあって、よかったな。『かえるのほんや』

『かえるのほんや』(作:やぎたみこ/PHP研究所)

池のほとりのやなぎの木の根元にあるのは、かえるの本屋。「かえるが本を読むの?」いえいえ、そんなことで驚いている場合じゃありません。だって、この本屋で人気のある絵本は、みんなこのお店でつくっているんです。紙、絵の具、のりだって手作り。さらにお話だってここにいる作家たちが考えているのです。でも、今日はおはなしづくりが行き詰まっている様子。そんな時は草のハンモックで昼寝が一番。ところが……?

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編集長のおすすめポイント

「かえるのほんや」で売っている絵本は、知識の絵本やハラハラする怖い絵本、さらにはこの本屋をつくった店長のお話まで。その内容は本当に幅広く、興味深いものばかり。新作絵本を催促される作家たちの様子や、完成した絵本がはじめて披露される瞬間なども、なんだかとっても描写がリアル。そうやって細かい場面の一つ一つを楽しみながら、本が生まれて読者の手に届くまでの流れを自然に理解することができるのです。本屋があって、よかったな。

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長すぎると、どうなるの?『へび ながすぎる』

『へび ながすぎる』(作:ふくながじゅんぺい/こぐま社)

緑色のぐにゃぐにゃした、ホースみたいに長いもの。誰もこれが「へび」だなんて気がつかない。だって、いくらなんでも……長すぎるもの。ねずみはすべり台に、うさぎは大なわとび。みんな上手に遊びます。でも、やっぱり誰も気づかない。確かに長すぎるものね、気づかないのも仕方がない。そんな風に笑いながら読んでいると、最後に驚くどんでん返しが待っていた!?

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編集長のおすすめポイント

子どもたちにしてみれば、へびだってわかっていても一緒に遊びたくなるものなのか。あるいは、わかっているからこそ、ずっとハラハラしっぱなしになってしまうものなのか。どんな風に読んでいるのかは、その子によって全然ちがうのかもしれませんよね。単純明快、シンプルで気持ちのいい絵本だけれど、実はちょっと奥深い。読んでいる子どもたちの様子も含めて楽しめる一冊ですよね。

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足の裏で感じる地球! 『はだしであるく』

『はだしであるく』(文:村中李衣、絵:石川えりこ/あすなろ書房)

スイカをつついたカラスを追いかけ、いつのまにやらはだしに。はだしで歩くと、どこも全部感触がちがう。ふんわりしてたり、硬かったり、じんめりしていたり、乾いていたり。足の裏をべったりつけて歩くと、道路の王様になった気分! 直接触れるだけで、世界の見え方が変わる。身体感覚が呼び起される絵本。

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編集長のおすすめポイント

はだしで歩くことなんて、いつからしてないだろう。でもあの感触だけは、はっきりと足の裏の記憶に残っているのです。冷たい土の上、ざらざらした砂の地面、水の中でぎゅっと踏みしめる小石。そして、慣れてくるとどんどん気持ちが大きくなってきて。心がうずうずしてくるのです。もしかしたら、はだしになるのも怖い子がたくさんいるかもしれません。この絵本を読んで、好奇心の方がちょっとだけ勝る……なんてことがあったらいいですよね。

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みんなの「いい一日」は、なにでできている?『いい一日ってなあに?』

『いい一日ってなあに?』(作:ミーシャ・アーチャー、訳:石津ちひろ/BL出版)

おばあちゃんちへ向かうダニエルに、まちの人たちが声をかけてくれます。「いい一日をすごしてね!」。でも、いい一日ってなんだろう。ダニエルが近所の仲良しな人たちに聞いてみると、なんだかみんな違う答えをもっているみたいだし、どれもがとっても素敵に聞こえてきます。いい一日を過ごしている人は、みんなにこにこ。そんな幸せな気持ちを少しずつもらってきたダニエルは……。

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編集長のおすすめポイント

日々のなかにあるシンプルな幸せ。これを見つけることができたら、どんなに毎日が楽しいことでしょう。でも、この絵本は教えてくれます。そんなに背のびをしなくてもいいのだと。たとえささやかだったとしても、他の人に気づかれないほどのことだったとしても。自分の好きなことや仕事を助けてくれる「いいこと」、その積み重ねがあれば。確かに私たちにも「いい一日」がつくっていけるのかもしれませんよね。

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わたしはいつも、ここにいる。『なみのいちにち』

『なみのいちにち』(作:阿部結/ほるぷ出版)

わたしは、波。ほら、ぼうや。怖がらないで、音を聞いてごらん。画面に広がる美しい海を背景に、繰り広げられるのは日常の風景からちょっと不思議な出来事まで。描かれるのは、そこに住む人々の豊かな表情や忘れることのない思い出、そして新しい出会いも。毎日同じようで、少しずつ違う一日。同じ場所なのに、時間によってまるで違う色を見せる景色。こんなにも色々な表情があるのかと、驚かずにはいられません。海の町で育った注目の絵本作家、阿部結さんが描きだす海の絵本。

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編集長のおすすめポイント

朝日に照らされて、まぶしいくらいにキラキラと光る海。海水浴のお客で混みあった昼間の海。少しずつ日が落ちていき、どんどん色彩を変化させていく海。そして静かで怖いばかりだと思っていた夜の海の、意外な表情。海はただそこにいるだけなのに。見せてくれるのは誰かにとってのかけがえのない、そして私たち読者にとっても忘れられない一日。またこの海に会いたくなれば、この絵本を手にとってめくればいい。そう思えるのが嬉しいですよね。

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備えあれば、憂いなし!? 『2ひきのカエル その ぼうきれ、どうすんだ?』

『2ひきのカエル その ぼうきれ、どうすんだ?』(作・絵:クリス・ウォーメル、訳:はたこうしろう/徳間書店)

池の上で大事そうに棒きれをかかえているカエル。もう一ぴきのカエルが「なんで そんな ぼうきれ かかえてるのさ?」と聞けば、これは犬よけ棒だと答える。犬が飛びかかってきたら、この棒でバンバーン!とやっつけると言うのだ。けれど、まわりには犬なんか来る気配もない。2ひきがそんな会話をくりひろげていると、背後には怪しい影が。そして、ふとした出来事をきっかけに、2ひきの周りではあっという間にとんでもない展開が……!

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編集長のおすすめポイント

2ひきのカエルの会話と表情。その組み合わせの絶妙なこと。起こるか起こらないかわからない出来事なのに、なぜか自信たっぷり。そんなカエルの態度に読者がほんの少し気持ちが傾きかけた頃、今度は本気で驚く表情を見せてくる。さっきはあんなこと言ってたのに! うーん、この出来事は「備えあれば、憂いなし」と言えるのか。カエルのことを笑っていいのか、どうなのか。最後の余韻までたっぷり楽しめる大満足の一冊なのです。

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こんな選手、どこにもいない! 『あの子は ぼくらの スーパースター』

『あの子は ぼくらの スーパースター』(文:フラン・ピンタデラ、絵:ラクウェル・カタリーナ、訳:せなあいこ/評論社)

毎週土曜日、マダーニくんがサッカーボールをはだしの足にとらえると、みんなが息をのむ。チームメイトだけじゃない、町中がぴたっと動きをとめる。ハトもとばない。なぜなら、マダーニくんの魔法の時間がはじまるから。ぼくたちは、みんな知ってるよ。マダーニくんが最高のサッカー選手だってこと。時々思うんだ。「もしマダーニくんが、ちゃんとしたサッカーシューズをはいたら、どんなすごいプレーをするのかな」って……。

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編集長のおすすめポイント

はだしの足でボールを自在にあやつる姿は、まるでミラクル! 本当にすごいプレーをする選手というのは、たとえ子どもであっても、そこにいるだけで空気を一つにしてしまう。マダーニくんはまさにそんなサッカー選手。一緒にいるだけで誇らしい気持ちにしてくれる。だからこそ、仲間たちはマダーニくんのことをちゃんと理解し、大切に思っているんですよね。その嬉しい気持ちが、読者にもまっすぐに伝わってきます。

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おいおい ねてるのか?『めをさませ』

『めをさませ』(作:五味太郎/絵本館)

「うっとりねてたら…おちました」あららら、だいじょうぶ? 目をつむったまま落ちてるよ。寝ているの? おーい、めをさませ! そのままだとやばいぞ! 縦開きの絵本の画面の中をどんどん落ちていくのは、なんだか可愛いらしいいきもの。なにしろ本人が落ちていることに気がついていない様子。そのままだと本当に……と、ここではっと目を覚ました「ぼく」は?

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落ちている時は、自分が落ちていることに気がつかない。そんな様子を想像すると、なんだかゾッとしちゃう。だけど気がついていないんだから、いいのかな。たまには、とことん落ちてみるのもスリルがあっていいのかも? いやいや、やっぱり。とにもかくにも、今自分が「めをさましている」のかどうか。そこがわかっていれば問題ないのです。子どもたちだって、同じですよね。

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なにもかもが気にいらない、どうなってんだ? 『ごきげんななめな おさるさん』

『ごきげんななめな おさるさん』(文:スザンヌ・ラング、絵:マックス・ラング、訳:ひさやまたいち/評論社)

ある朝、目がさめるとジム・パンジーは、なにもかもが気に入らないことに気づきます。こんなに素晴らしく晴れた日なのに! おひさまは照りすぎるし、空はあおすぎる。バナナは甘すぎるし、友だちは心配してくれる。モヤモヤ、イライラ。どうなってんだ?「たぶんきみは、ごきげんななめなんだよ」 ジャングルの仲間たちは、ジムの気分をかえてやろうと、色々な楽しい遊びに誘います。でも、しかめっつらしたジムは……。

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編集長のおすすめポイント

誰の目にも明らかに「ごきげんななめ」なジム・パンジー。だけど本人は、決してそれを認めようとはしないのです。それはそうです。ジムにだってこの感情がなんなのか、よくわかっていないのですから。わかっているのは、なにをやってもつまらない。やる気にもなれないし、笑うことだってちょっぴりツライってこと。でもね。一日の終わりには、ジムだって「こんな日も悪くなかったな」と思っているはず。自分の気持ちと上手に付き合うことだって、大切なことですよね。

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それは、どこからともなく突然に…… 『戦争が町にやってくる』

『戦争が町にやってくる』(作:ロマナ・ロマニーシン、アンドリー・レシヴ、訳:金原瑞人/ブロンズ新社)

人びとが楽しく暮らす、うつくしい町・ロンド。3人の主人公、ダーンカとファビヤンとジールカも、この町を心から愛していました。その日、ロンドの町はいつもと変わらず、人びとはいつもどおりの生活をしていました。ところが突然、戦争が町にやってきたのです。必死で抵抗しようとするも、全てがむだでした。なぜなら、戦争には心も心臓もないからです。ウクライナの作家が子どもたちに向けた描いた、平和と戦争の絵本。

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編集長のおすすめポイント

知恵と能力のすべてを使い、戦争に立ち向かうダーンカとファビヤンとジールカの3人。心も形も見えない相手に、わきあがってくるのはきっと無力感。それでも考えること、知恵をしぼること、行動をおこすこと。それらをやめてはいけないのだと、赤いヒナゲシを見ながら思うのです。傷ついた世界をもとに戻すことはできないけれど、花を咲かせようとする気力だけは守っていかなければ。絵本を読みながら、改めて心を奮い立たせるのです。

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絵本ナビ編集長がおすすめする「NEXTプラチナブック12選」はいかがでしたでしょうか。対象年齢も、あつかっているテーマもさまざま。気になった絵本があったら、ぜひ手にとってみてくださいね。絵本ナビ「プラチナブック」連載ページへ