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新科目への取り組み方を紹介する「理数探究の考え方」 佐藤健太郎が選ぶ新書2点

『理数探究の考え方』

 本年度より、高校の科目に「理数探究」が加わった。教師から一方的に教わるのではなく、生徒が自ら課題を設定し、観察や実験、議論を通じて探究を行っていくという科目だ。石浦章一『理数探究の考え方』(ちくま新書・946円)は、専門の研究者の視点から、この新たな科目への取り組み方について語った一冊。といっても内容は高校だけでなく、小学校から大学院まで理科教育全般にわたる。科学を支える確率的思考、信頼できるエビデンス、科学リテラシーといったわかりにくい事柄について、それぞれ事例を挙げて述べており、理科教育関係者以外にも参考になるところが多いだろう。
★石浦章一著 ちくま新書・946円

『分子をはかる がん検診から宇宙探査まで』

 原子には個性がないが、これがいくつか集まって分子を作ることにより、固有の性質を示すようになる。そこにある分子が何なのか突き止めることは、多くの科学技術分野にとって欠かせない要素となる。
 藤井敏博『分子をはかる がん検診から宇宙探査まで』(文春新書・1100円)は、分子の重さをはかる「質量分析」についての解説書だ。一見単純な技術ながら、その応用範囲は健康診断や犯罪捜査、生命の起源の研究にまで及ぶ。田中耕一氏を始め、歴代7人にノーベル賞をもたらした技術の深さと豊かな可能性を知ることができる。
★藤井敏博著 文春新書・1100円=朝日新聞2022年11月12日