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田中大喜が選ぶ新書2点で来年の大河ドラマを予習 新視点与える「新説 家康と三方原合戦」「徳川家康の決断」

『徳川家康の決断』

 そろそろ来年のNHK大河ドラマが気になる読者も多いことだろう。本多隆成『徳川家康の決断』(中公新書・990円)は、合戦を中心とする10の「人生のターニングポイント」を取り上げ、その主人公の波瀾(はらん)の生涯を描く。

 小牧・長久手合戦後の羽柴秀吉による「家康成敗」計画はあまり知られていない事実と思われるが、実は三方原合戦の大敗、本能寺の変後の「伊賀越え」と並ぶ最大の危機の一つだったとの指摘は興味深い。しかし家康は、天正大地震という天災も味方してこの危機を回避できたという。人事を尽くす人物には天命がやって来るということなのか。
★本多隆成著 中公新書・990円

『新説 家康と三方原合戦 生涯唯一の大敗を読み解く』

 平山優『新説 家康と三方原合戦 生涯唯一の大敗を読み解く』(NHK出版新書・968円)は、先行研究の考証を参考にしつつ断片的な史料と伝承を丹念に検討することで、三方原合戦の実態に迫る。

 武田軍は水陸両方から徳川領内に攻め込み、浜名湖水運と三河湾水運の制海権を奪って家康の居城・浜松城の補給路を断とうとしたため、家康は信玄に戦いを挑まざるをえなかったと指摘する。浜松城の補給を支える陸上・水上交通路に着目して合戦の実態を読み解いた点は本書の白眉(はくび)であり、戦国合戦の見方に新たな視座を提供する。
★平山優著 NHK出版新書・968円=朝日新聞2022年11月26日