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雑誌「CGWORLD」 画像生成AIが仕事を奪う?

「CGWORLD」

 最近、言葉を入力することで、それっぽい画像を描いてくれる画像生成AIが登場し、SNS上で話題になっていた。私もいろんなものをゴッホ風に描かせてみたりして遊んだが、突拍子もない絵が出てきたりして愉快だった。AI技術をこんな風に無駄遣いできるようになるとは、数年前には思いもよらなかったことである。

 そこで今回は、最新号で画像生成AIに関する特集を組んでいたCG映像クリエーターの総合誌「CGWORLD」を手にとってみた。面白い画像や映像表現が見られるのでは、と期待したのだ。

 ページを開くと、のっけからコンテストの応募作品紹介など見ごたえのあるCG画がたくさん載っていて、それらを見ているだけでシンプルに楽しめた。なかでも学生の描いた作品の完成度の高さには舌を巻いた。

 残念ながら、AIを使った画像作品はまだこれからのようで、人間が思いつかないような凄(すご)い絵が見たいという欲求は叶(かな)えられなかったが、本誌ではAIの活用法や向き合い方についての考察がとても興味深い。

 たとえば今後画像生成AIが普及すると、クリエーターの仕事が奪われるのではと懸念する声があることについて、インタビューや座談会で詳しく取り上げられており、その議論に説得力を感じた。

 識者の間に過度に悲観する声はなく、AIでどんな画像が出てこようと、どれをどう使うかディレクションをするクリエーターは必要であるという意見が大勢を占めていた。面倒な作業をAIに任せて、人間は仕上げの楽しい部分だけ担当するような使い方ができるのでは?と前向きなとらえ方をする人もいたぐらいだ。

 そのほか画像生成AIが投げかける、法律や倫理面の課題についても触れられていて、それがまた面白い。

 AIで制作した3Dモデルと偶然同じ顔を持つ実在の人物がいて、自分の顔画像を勝手に使っただろうとクレームが来たらどうするかなどという、かつてない珍妙な問題が今後起こりうるというのである。AIが生成した画像が自分の作品に似ていた場合どう対応するべきか、AI画像の著作権はどこにあるかなど、弁護士が解説しているが、新技術に法整備が追いついていない現状が見えてくる。

 さらにAI画像は過去のデータをもとに作られるため、看護師の画像がみな女性になるなど、時代遅れの価値観や偏見や差別などもそのまま反映されてしまう現状についても言及があり、AIが描いた面白い画像が見たいと思っただけなのに、思わぬ波紋の広がりを見せられた形だ。

 この先画像生成AIをめぐる問題がどうなるのか、新しい興味が湧いてきたが、それはそれとして、依然突拍子もない愉快な画像が見たい。=朝日新聞2023年1月7日掲載