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「桜華」書評 防衛大女子1期生の実像を描き出す

評者: 保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2023年02月11日
桜華 防衛大学校女子卒業生の戦い 著者:武田 賴政 出版社:文藝春秋 ジャンル:ノンフィクション・ルポルタージュ

ISBN: 9784163916415
発売⽇: 2022/12/07
サイズ: 20cm/341p

「桜華」 [著]武田頼政

 防衛大学校に女子学生が初めて入学したのは、1992年4月である。男女雇用機会均等の流れに防衛庁(当時)は消極的だったのだが、門戸開放の世論に抗しきれなくなったのだ。
 それから30年余、防大女子学生はどのような職場人生を送っているのだろうか。第1期生など女性自衛官9人の、ありのままの姿が語られている。著者は、軍事という極めて男性的に見える空間で、日々の職務をこなす彼女たちの実像を描き出す。結婚、出産、育児と向き合いながらの勤務である。別居生活、目的意識の乖離(かいり)などによる離婚が意外に多い。だが、それを乗り越える強さを持つ。
 「女を捨てろ」という言を守り抜く幹部自衛官、戦闘機パイロットを目指した航空自衛隊員、戦争法規に精通する副法務官、イージス艦長を務める海上自衛官。その生の声は日本の防衛を考えるうえで相応の意味があるようにも思う。軍事組織の本質を問い直すべき時代なのだろうか。