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真鍋真さん「きみも恐竜博士だ!」インタビュー 好きなものを大事にして

真鍋真さん

 ポケットから取り出したのは小さな骨。恐竜の子孫、ニワトリの前脚の標本だ。手羽先を料理して、おいしく食べたら、作ってみよう。本書に収録されたオンラインの連続授業で子どもたちと取り組んだ。「恐竜の前脚とどう違う? どうやって鳥に進化したのかな」。絵本や図鑑ではない入門書を、と企画した。授業はティラノサウルスやトリケラトプスの標本が並ぶ国立科学博物館で行うはずだったが、パソコン越しでも子どもたちの目は輝き、入手しにくい鶏肉の部位を大分県から取り寄せた子もいた。「熱量を感じられたことが何よりうれしかった」

 「恐竜博士」と呼ばれて四半世紀以上。ただ、子どもの頃から恐竜好きだったわけではない。鉄道と旅行、生き物に熱中した少年だった。

 地理の教員を目指していた浪人時代、新たに地学の勉強を始めたことが転機に。横浜国大教育学部地学科に入学。関心は化石、古生物学へと広がった。「恐竜、やってみない?」。大学で教えていた古生物学者の長谷川善和さん(現・群馬県立自然史博物館名誉館長)に誘われたのは1980年代初め。日本各地で恐竜化石が出始めていたころだ。「2、3年のつもり」だった研究が人生を変えた。

 発掘現場では、大きな発見につながる小さなカケラといくつも出会った。わかりたい、解決したい。そんな思いが今なお謎だらけの恐竜研究に向かわせる。「誰かに教えてもらったら、発見の喜びは得られない」。文章でもトークでも、説明しすぎないよう気を配る。

 最近の講演会に7歳の女の子がいた。終了後、見せてくれたのは自作の恐竜クイズ。子どもたちには、今、好きなものを大事にしてほしい。恐竜に限らない。「興味のあることに熱中した経験は、いつかきっと自分を助けてくれるから」 (文・松沢奈々子 写真・横関一浩)=朝日新聞2023年2月11日掲載