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「ホッキョクグマのプック」ほか子どもにオススメの3冊 初めて見る外の世界の驚き

「ホッキョクグマのプック」

 冬のある日、カナダの大自然の懐で生まれたホッキョクグマの赤ちゃん、プック。お母さんにぬくぬく抱かれて育ちますが、やがて巣穴の外に出る日がきました。まぶしい雪原、シロフクロウやホッキョクウサギ、そしてオーロラ。「うわぁ、そらが おどってる!」。初めて知る世界の驚きを、プックの目で感じることができます。

 野生動物を観察したくてアラスカに暮らすようになったという作者。アルミ板をはさみで切って輪郭を作るユニークな技法が、肌でとらえた体験と結びつき、確かな存在感を伝えます。お母さんのまねから学んだり、迷子で心細い思いをしたり、幼い読者が地球に共生する生きものを親しく感じられる絵本。巻末のやさしい解説もうれしい。(あずみ虫作、童心社、1650円、3歳から)【絵本評論家・作家 広松由希子さん】

「パップという名の犬」

 子犬のパップは、ある雨の夜、飼い主によって「しかばね横丁」に置き去りにされる。途方にくれるパップを助けてくれたのは野良犬のフレンチだった。フレンチは人間に捨てられた仲間たちと一緒にいて、パップもそこで暮らすことになる。群れで生きる犬たちを個性豊かに描いているところに、作者の動物たちへの深い愛を感じることができた。母犬が子犬に語りついできたという人間との「聖なる絆」はあるのか。またパップはどうなるのか、はらはらしながら読んだ。(ジル・ルイス作、さくまゆみこ訳、評論社、1760円、小学4年生から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「草原が大好き ダリアちゃん」

 世界のさまざまな地域の文化を、そこで生きる子どもを主人公にして紹介する写真絵本シリーズの一冊。今回の主人公は、味噌(みそ)っ歯の5歳の少女ダリアちゃん。冬はマイナス40度にもなるロシアのシベリアで、家族とトナカイたちに囲まれて暮らす。自然の中にあってほとんどが手づくりという日常の衣食住を伝える写真からは、8か月も雪におおわれている厳しさも、広い草原を走り回ったりベリーやキノコを摘んだりする楽しさも、そしてダリアちゃんの「ここが大好き」という思いも、伝わってくる。(長倉洋海 文・写真、アリス館、1650円、小学校低学年から)【翻訳家 さくまゆみこさん】=朝日新聞2023年2月25日掲載